BOUND

バウンド―纏足 (YA Dark)

バウンド―纏足 (YA Dark)

継母から「役立たず」と呼ばれ、家の雑用一切を押しつけられている少女シンシン。それでも纏足の痛みに苦しむ姉を気づかい、周囲への優しさを忘れない。そんなシンシンが邪悪な継母や過酷な運命から逃れられる日は来るのだろうか?

中国版『シンデレラ』。
ガラスの靴を纏足にアレンジしたのが秀逸で、「バウンド」という題名が足をきつく縛る風習と、つらい運命に縛られた主人公の境遇にかかっている。
マジカルな要素もなく、一見、シンデレラには見えないんだけど、読み進めればしっかりとシンデレラなのが、さすが童話の再話をいくつも書いているナポリの技量。
また、お伽話の原点が持っていたグロテスクさもしっかりと織り込まれており、しかもカニバリズムに近い部分にまで到達している。


母親がマジキチなのは同じだけど、姉が当時の風潮に毒されているとは言え、人格破綻者でないのが面白く、彼女を通して馴染みの薄い明朝の女性観、結婚観を共有することができる。
それがあるからこそ、主人公シンシンの聡明さと異質さ(当時にあって)が際立つ。


ラストは、自身の才覚によって、当時の中国の女性としては最高の境遇を掴みとるんだけど、今度は王宮に縛り付けられちゃうんじゃないの? と意地悪に読んでみたり。


ヤオワンがいいキャラだっただけに、浮いた存在になっちゃったのが残念。