MAGIC'S PRICE

魔法の代償 上 (最後の魔法使者3) (創元推理文庫)

魔法の代償 上 (最後の魔法使者3) (創元推理文庫)

魔法の代償 下 (最後の魔法使者3) (創元推理文庫)

魔法の代償 下 (最後の魔法使者3) (創元推理文庫)

〈最後の魔法使者〉三部作最終巻。

国王ランデイルの病は、日に日に重くなっていた。そんな国王の苦しみを和らげるために連れてこられたのが、若きステフェンだった。たかが一介の〈詩人〉見習いに何ができる。半信半疑の人々の前で彼が歌うと、国王の苦しみがたちまち薄れた。ヴァニエルは、喜んでステフェンを宮廷に迎え入れる。若く魅力的な詩人に、思わず心惹かれるヴァニエル。そしてまたステフェンも、ヴァニエルに焦がれるようになっていた。ヴァニエルの新たな恋の行方は? 内憂外患のヴァルデマールの将来は? 伝説の〈魔法使者〉ヴァニエルの生涯を描く三部作完結。
国王はいまや政務を執るのもやっとという有様。世継ぎのトレヴュンは若く経験もない。もともと戦の絶えない隣国カースでは、太陽神の司祭が魔法を目の敵にして魔法使いを追放している。人々は次第に〈魔法使者〉に頼るようになり魔法をもたない〈使者〉を軽んじるようになっていた。そんな状況に危倶をおぼえたヴァニエルは、将来にわたってヴァルデマールを魔法の攻撃から守護するために、大がかりな術をほどこすことにした。だが、見えざる敵の密やかな攻撃がヴァニエルに、そして〈魔法使者〉たちに迫っていた。三部作いよいよクライマックス。

ヴァルデマール年代記は一貫して“ペア”を描き続ける物語なんだよね。
その性質から、大局的な物語と同時に描写するのはかみ合わせがよくない。今回は政治的には危機にあるにもかかわらず、そちらは諦めたのか、ペアに焦点が当てられている。
ランディとシャヴリーの死までも共にしようというペア、ジーサとトレヴの若いペア、そしてシリーズ屈指の絆の硬さを見せるヴァニエルとステフェンのペア。


王国最大の重鎮となったヴァニエルは疲れ果て、これまでも不幸の連続だったため、作者の親心(とBL心)が出たのか、かなりヴァニエルの初いロマンスに紙幅が費やされている。
それに対して、暗黒卿への展開がちょっと拙速に感じてしまう。この作者、黒幕との対決がなんかイマイチなことが多いんだよなぁ。毎度ペース配分がよくなく、ラスト近くで息切れしてるように見える。
ヴァニエルとステフェンのラブラブな様子は第二部でやって、第三部はヴァルデマールの危機と暗黒卿との戦いをたっぷり描いて欲しかった。
作者のBL趣味はいいとして、主人公が陵辱されるの好きね(笑)


シリーズを読んできた者にとっては、ヴァルデマール国内では魔法が使えなくなってしまう原因が描かれているのが面白い。また、普通の〈使者〉が軽んじられていた時代で、それに危機感を覚えたヴァニエル、そして彼が最後の〈魔法使者〉になってしまう、という流れがあるんだけど、下に見られているという描写が薄いのが残念。


ちょっと気になったのが、プロメテウスに似た神話にちょっと言及されるんだけど、やはりヴァルデマールは遠未来の地球の子孫で、『歌う船』*1とつながってたり、とか。


次回はMAGE WARS三部作が邦訳予定。ここまで長かった〜。
でも、個人的には『太陽神の司祭』*2の続きが読みたいんですけど。
あと、中公からはもう出ないの?