謎の物語

謎の物語 (ちくま文庫)

謎の物語 (ちくま文庫)

以前新書*1で出たアンソロジー文庫落ち、かと思いきや、結構収録作が違います。

物語にはいつも「結末」があるとは限らない――王女を愛した若者は、身分違いの恋を罰せられる。目の前には扉が二つ。一つには虎、一つには美女。彼が選んだ扉の向こうに待っていたのは……。究極の選択を強いられた主人公の運命は? 謎は謎のまま、読者の想像に委ねられる。そんな不思議な、謎と運命の物語(リドル・ストーリー)15篇。


 収録作品
・「恐ろしき、悲惨きわまる中世のロマンス」……マーク・トゥエイン
・「女か虎か」……フランク・R・ストックトン
・「三日月刀の督励官」……フランク・R・ストックトン
・「女と虎と」……J・モフィット
・「謎のカード」……クリーヴランド・モフェット
・「続・謎のカード」 ……クリーヴランド・モフェット
・「穴のあいた記憶」……バリイ・ペロウン
・「ヒギンボタム氏の災難」……ナサニエル・ホーソーン
・「茶わんのなか」……小泉八雲
・「指貫きゲーム」……O・ヘンリー
・「ジョコンダの微笑」……オルダス・ハックスリー
・「野原」……ロード・ダンセイニ
・「宵やみ」……サキ
・「園丁」……ラドヤード・キプリング
・「七階」……ディノ・プッツァーティ

ラストを読者に委ねるタイプの古典アンソロジーという性質から、未読でも既読感の多い作品が多いんだけど、余白、余韻を楽しむものばかりなので、じっくり読みたい一冊。


印象的だったのは、
・「女か虎か」
この手の作品の定番中の定番……だそうです。恥ずかしながら初読。
虎と美女と、二つの扉のどちらを開いたのか、という単純なストーリーなんだけど、一切無駄がなく、ラストを読者が想像させるように仕向ける仕掛けが巧みで、かつどっちとも断言できない妙。


・「続・謎のカード」
「謎のカード」が「牛の首」のような話で、その不条理感が傑作なんだけど、そういうものに続編をつけたら台無し、ということがよくわかる一作。
もう、一昔前のハリウッド続編駄作並のひどさで印象的(笑) 


・「野原」
美しい野原。しかし、そこに来ると嫌な気配がする。果たして?
具体的なことはまるで描かれていないのに、余韻が非常に染み渡る。


・「宵やみ」
来たばかりの町で、ホテルの場所を忘れ、金もないという男。今夜は野宿するしかないというのだが……
このアンソロジーで一番わかりやすい作品。


・「園丁」
なくなった弟の息子を、我が子のように育てる女性。
しかし、戦争が始まり、彼は戦死してしまう。その墓参りに行くことになり……
よくわからず、解説探して、再読してしまった。
再読すると、様々なものが見えてくる。お見事。


・「七階」
唯一、既読。
本末転倒な変な話好きなら、是非オススメ。