AVEROIGNE CHRONICLE

スミス新短編集も、これで三冊目。

若き法学生が禁断の文書を読んで美しきラミアのもとに赴く「物語の結末」、森で楽しもうとした詩人と娘が吸血鬼の魔法に囚われる「アヴェロワーニュの媾曳」ほか、幻想の地アヴェロワーニュの年代記に加え、異様な死をとげた作家の日記が明かす、恐るべき時間の神に背いて禁忌の術を用いた神官の物語「アフォーゴモンの鎖」など、前世や死者の復活にまつわる6篇を〈降霊術綺譚〉として付した。ゾティーク、ヒュベルボレオスに続いて、フランスのアヴェロワーニュ地方を舞台に綴られた物語を一冊に集成し、詩人スミスの流麗かつ端正なペンが描きあげた短編小説18篇を収録する。


・「アヴェロワーニュ」Averoigne
・「怪物像をつくる者」The Marker of Gargoyles
・「アゼダラクの聖性」The Holiness of Azedarac
・「イルゥルニュ城の巨像」The Colossus of Ylourgne
・「アヴェロワーニュの媾曳」A Rendezvous in Averoigne
・「アヴェロワーニュの獣」The Beast of Averoigne
・「マンドラゴラ」The Mandrakes
・「ウェヌスの発掘」The Disinterment of Venus
・「サテュロス」The Satyr
・「シレールの魔女」The Enchantress of Sylaire
・「物語の結末」The End of the Story
・「蟾蜍のおばさん」Mother of Toads
・「アフォーゴモンの鎖」The Chain of Aforgomon
・「魔力のある物語」A Necromantic Tale
・「妖術師の帰還」The Return of the Sorcerer
・「分裂症の造物主」Schizoid Creator
・「彼方から狩り立てるもの」The Hunters from Beyond
・「塵埃を踏み歩くもの」The Treader of the Dust

いつもどおりっちゃあ、いつもどおりなんだけど、これまでが人知を超えた太古の物語*1であったのに対して、フランスのアヴェロワーニュ地方という現実とつながりがある地を舞台にしている。
その縛りもあってか、コズミック・ホラー感は薄く、C・L・スミス風味の民話と言った趣。これまでの、かすれた極彩色の、爛れた世界を期待しているとちょっと肩透かし。
また、これまでが禁じられた知識を追う果ての破滅を描いた作品が多かったけど、今回は異形の愛といった感じかな。
ちなみに、アヴェロワーニュものは「蟾蜍のおばさん」まで。それ以降は、降霊術をテーマにした作品集。


お気に入りは、「アヴェロワーニュの獣」「サテュロス」「物語の結末」「蟾蜍のおばさん」「彼方から狩り立てるもの」「塵埃を踏み歩くもの」あたり。


「彼方から狩り立てるもの」って、ティンダロスの猟犬の話かと思ってたんだけど、違うの? 勘違いしてました。


相変わらずの原音主義はさすがに慣れたけど、やはり日常生活で使われる単語はそのままにして欲しいなぁ。
神話とか歴史の固有名詞は耳慣れないカタカナで記すのも悪く無いと思うけど、キャラクターの台詞で「ステュディオ」とか言われると、そこで一瞬詰まっちゃう。
あと、神経を逆撫でさせる後書きはなんとかならんの? 頭悪くてごめんなさいね、としか答えられない(笑)
この手の作品を訳し続けてくれるのは感謝してるけど。