THE BLACK SWAN

ラッキー邦訳で、初のノンシリーズ作品。

魔術師フォン・ロットパルト男爵によって昼は白鳥、夜は人に戻る魔法をかけられた少女たち。犯した罪に対する当然の罰だという父の言葉を信じて監視役を務めていたオディールは、余暇には魔術研究に励み、父親を満足させようと試みるが果たせず、鬱屈した毎日を送っていた。だが白鳥の女王に試練が課せられ、その罪の告白を聞くことでオディールの頑なな心に変化が生まれ……。ラッキー版「白鳥の湖」登場!

ヴァルデマールものを期待したんだけどなぁ。
まぁ、それ以外の作品は知らないも同然(ヴァルデマール以外は『旅立つ船』*1のみ)なので、他の味を試してはみたかったんだよね。


……ヴァルデマールものを期待したんだけどなぁ(笑)


民話・童話の新解釈というのは珍しくないけど、この作品は、全くステレオタイプ的なファンタジー以上でも以下でもなく、特に注目できるような点がないなぁ。
エピローグ好きとしては、楽しまなかったとは言わないけど、それでもあまりに予定調和的で驚きがない。


キャラクター造形が、まぁ、多少語れるかなぁ。
それぞれのキャラクターがエゴで動いていることを描かれているのがユニーク。
オデットでさえ利己的な過去を持ち、王子は結構なクソ野郎(笑)。
特に敵役である女王は強烈な印象を残す。普通、正当な後継者を陥れて、自身が権力を握ろうとする人物は小物が定番なんだけど、彼女は野心が有り余って入るけれど、権力者としては有能で、ちゃんと国政を考え、国を納めてるんだよね。正直、彼女が破滅する理由がわからない。むしろ、女王がのし上がっていく姿が読みたかった。
原作では、敵であるオディールも抑圧されているというのが、この作品のキモだと思うんだけど、彼女が普通にいい子で、イマイチ深みが足りない。


やはり、ヴァルデマールを……