THE VIEW FROM THE SEVENTH LAYER

第七階層からの眺め

第七階層からの眺め

『終わりの街の終わり』*1の作者の短篇集。

宇宙船を降りてシリウス星で休暇を過ごしていた“ケプティン”はある日、ペットのトリブルを連れた婦人に出会い、ゆきずりの恋がいつしか……。 チェーホフの傑作短篇をスター・トレック風にアレンジした「トリブルを連れた奥さん」をはじめ、子供向けゲームブックの形式を使って、人間の最後 の一日をたどる「〈アドベンチャーゲームブック〉ルーブ・ゴールドバーグ・マシンである人間の魂」、宇宙から来た〈実在〉と島で暮らす孤独な女性の交流を 綴る表題作「第七階層からの眺め」など、短篇の名手がSF、ラブストーリー、コミック、ファンタジーの要素を駆使しながらジャンルの枠にとらわれることな く、多彩な手法で人間のいとなみを描ききった13篇の滋味あふれる物語。 アメリカのイタロ・カルヴィーノと称される期待の若手作家、待望の傑作短篇集。


 収録作品
・「千羽のインコのざわめきで終わる物語」
・「第七階層からの眺め」
・「思想家たちの人生」
・「静寂の年」
・「壁に貼られたガラスの魚の写真にまつわる物語」
・「ジョン・メルビー神父とエイミー・エリザベスの幽霊」
・「〈アドベンチャーゲームブック〉ループ・ゴールドバーグ・マシンである人間の魂」
・「トリブルを連れた奥さん
・「瞳孔にマッチ棒の頭サイズの映像が含まれている物語」
・「ホームビデオ」
・「空中は小さい穴がいっぱい」
・「アンドレアは名前を変える」
・「ポケットからあふれてくる白い紙切れの物語」

普通小説と呼ぶには奇想寄り、奇想と呼ぶには普通寄り、そんな立ち位置。
超常的だったり、ちょっと奇妙な話が多いんだけど、全体的になんらかの超越的存在が彼らの人生を見ているような印象が強い。その視点があるから、どんな不思議な世界でも、そこにある人生の物語は普遍的に読め、主人公たちが置いてけぼりにされてしまう読後感が強い。


お気に入りは、
・「千羽のインコのざわめきで終わる物語」
 歌の才能に溢れる街。
 そこで口の聞けない老人は、無数のインコを飼っていた。
 いつしか、記念日やレセプションに現れ、インコをプレゼントするようになった。


・「静寂の年」
 無音になる瞬間が広がり、静寂に包まれるようになった街。
 それは、犯罪や病気にも効果があり、人々は自ら静寂を創ろうとするが……


・「壁に貼られたガラスの魚の写真にまつわる物語」
 大学で教えるため、見知らぬ町で家を借りた職人。
 そこには、今は家を開けている家主の息子の、様々な年代の写真が貼ってある。
 写真たちは、職人の生活を眺めていて……


・「ループ・ゴールドバーグ・マシンである人間の魂」
 アドベンチャーゲームブック形式で描かれた男の一日。


・「トリブルを連れた奥さん
 シリウスのリゾート地で、魅力的な婦人と出会った宇宙船の船長。
 彼女とのロマンスを楽しむが、休暇が終わった後も彼女と会いたくなり……


・「ポケットからあふれてくる白い紙切れの物語」
 買ったコートから、見知らぬ紙片が溢れてくる。
 それは、人々の願いが書かれていることに気づく。


特に、「ループ・ゴールドバーグ・マシンである人間の魂」は話そのものは普通なんだけど、アドベンチャーゲームブック形式が、見事に人生を描くことに合致している。