The Cold Equations and Other Stories

冷たい方程式 (ハヤカワ文庫SF)

冷たい方程式 (ハヤカワ文庫SF)

新装版かと思いきや新編集。まぎらわしい書名だなぁ。

ただ一人の来月を目的地に届ける片道分の燃料しか積んでいない緊急発進艇に密航者がいたら、パイロットのすべきことはただひとつ――船外遺棄だ! だがそれが美しい娘で、しかもたった一人の兄会いたさに密航したのだとしたら、あなたならどうする? ……SF史上に燦然と輝く記念碑的名作「冷たい方程式」をはじめ、名作、傑作の誉れ高い作品全9篇を厳選。旧版からの2篇に新たに7中短篇を加えたSF入門書の新版登場!


 収録作品
・「徘徊許可証」……ロバート・シェクリイ
・「ランデブー」……ジョン・クリストファー 
・「ふるさと遠く」……ウォルター・S・テヴィス
・「信念」……アイザック・アシモフ
・「冷たい方程式」……トム・ゴドウィン
・「みにくい妹」……ジャン・ストラザー
・「オッディとイド」……アルフレッド・ベスター
・「危険! 幼児逃亡中」……C・L・コットレル
・「ハウ=2」……クリフォード・D・シマック

さすがに粒ぞろい。
「冷たい方程式」を読むのは何度目かだけど、やはり間違いなく名作。上記したものの、いろいろな意味で表題にしたくなるよね。


他に気に入ったのは、
・「徘徊許可証」
 辺境の植民星。地球と連絡が途絶えて数世紀、そこは犯罪という言葉がないほどのどか。
 ある日、地球から視察が来ることになり、村人たちは地球を模倣しようとする。
 しかし、地球には犯罪者が必ずいるのに、ここにはいない。
 一人の青年が公的に犯罪者になるように選ばれるが……
 シェクリイらしい作品。
 間抜けで、ユーモアなやり取りながら、強烈な皮肉が隠すことなく叩きつけられる。
 微笑ましくも、ゾッとする戦慄。
 

・「みにくい妹」
 シンデレラ真説。
  

・「オッディとイド」
 無意識に、自分の望むように、全ての事象を操ってしまう青年。
 それに気づいた教授たちは彼を教育し、今の戦争を終わらせて、平和な世界が来るように仕向けるが……


・「ハウ=2」
 犬型ロボットを注文したはずなのに、届いたのは人型。
 思わず組み立ててしまうが、それは試作品の高性能ロボット。
 しかも、材料があればどんどんロボットを作っていく。
 その様子に国税局とロボット会社から訴訟を起こされてしまう。


いいアンソロジーだと思うんだけど、SF入門書という肩書きにしては、中途半端に古いばかりなんだよなぁ。雑誌掲載のみの作品も多く、そういう意味でもSFファン向けという体裁。
まぁ、SFマガジンに載ったきりの名作は多いから、それをまとめたアンソロジーは出して欲しいけどね。