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パンチョ・ビリャの罠 (集英社文庫)

パンチョ・ビリャの罠 (集英社文庫)

1957年、アメリカとメキシコ国境の町。中年小説家へクターの前に置かれた袋には、メキシコの英雄、パンチョ・ビリャの首が入っていた。そこからへクターは、名門大学の秘密結社、FBI、メキシコの悪党etc.、が繰り広げる、首の争奪戦に巻き込まれる。陰謀、隠された宝、女優との恋……をかいくぐり、へクターは無事に首を正当な持ち主に渡すことができるのか? 史実と物語が見事に融合する痛快クライム小説!

賞金首とか比喩でなく、ホントの首の争奪戦!


主人公は売れっ子犯罪小説家のヘクター。軍にいた経験もあり、修羅場にも慣れているが、今では糖尿病を患い、体にもガタが来はじめている。
そんな彼とパンチョ・ビリャの首を狙うのが、ブッシュ上院議員、FBI、イェール大学秘密サークル、元傭兵、殺し屋の面々。
追跡劇の合間に、オーソン・ウェルズマレーネ・ディートリッヒを始め、実在の文学、映画ネタがヘクターの皮肉な口調で語られていく。
この語りで史実とピカレスクが同居しているので、どこまで事実なのかが見極めにくい。


スピード感ある展開、軽々しいヴァイオレンス、ブラックジョーク、にまぶされた安っぽさは現代のパルプ的。そもそも、マクガフィンがミイラ化した首というのが悪趣味だし、それを狙う目的も(客観的に見て)かなり馬鹿馬鹿しい。首のダミーを作るシーンはひどすぎて笑ってしまったよ。
物語は、1957年、1967年、1970年の三部構成だけど、90%が第一部に費やされている。しかし、残りはけっしておまけでなく、特に三部のラストときたら、ここに来てアメリカン・ニューシネマ的疾走感、美しさ。
ラストのカッコ良さだけでも、読む価値あったな。