"アライバル"―新世界へ ショーン・タン 作品を語る
津田ホールで開催されたショーン・タン講演会に行ってきた。
【プログラム】
第1部
『The Lost Thing』上映(字幕付)
ショーン・タン氏講演
第2部 対談
ショーン・タン氏×柴田元幸氏(アメリカ文学研究、翻訳)
まず、第83回アカデミー賞短編アニメ賞を受賞した『The Lost Thing』の上映。
ストーリーは、自分が属するべき場所を探す、といったタンによく見られるモチーフ。
不気味で愛らしいクリーチャー、見覚えがあるような奇妙な風景、細部にこだわるガラクタ……
あの質感をちゃんとCGに置き換えられているだけで称賛に値する。
もともと、ショーン・タン自身は映像化に興味がなかったそうだけど、制作スタッフの説得に応じての映画化だとか。
その後に講演会。
ここで、自分が抱いていた感想どおりの話が聞けたので大満足。
それは、テキストは絵の説明をしているものでなく、そのギャップを読者の解釈で埋めることによって、作品が完成するというもの。
また、帰属や家、などのモチーフを意識的に多用しているようだ。
ちなみに、「エリック」はフィンランド人の友人がモデルだとか。
第2部は、柴田元幸との対談。
ここでは、柴田元幸が似ていると感じた日本の作品を見せて、その感想を聞く。
北村聡『UFO DIARY』
クラフト・エヴィング商會『どこかにいってしまったものたち』
の2作品。
ショーン・タンが今携わっているプロジェクトで、美術館から見知らぬものを送ってもらって、彼がさも知っているかのように出鱈目な解説を書く、という展示があるそうな。これはクラフト・エヴィング商會の本に似ているかな。
他にも、彼の子ども時代の絵や持ち歩いているスケッチブックなども公開。
その後に来場者の質問。
『アライバル』の白い生き物は、子どもの時に卵から孵していた、カエルになりかけのオタマジャクシがモデルとか。それは主人公の男が、まだどちらの国にも帰属できていないことを表しているとのこと。
これなら、未訳作品の邦訳も心配しなくて大丈夫そうだなぁ。
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