THE CASEBOOK OF JEEVES

ジーヴズの事件簿―才智縦横の巻 (文春文庫)

ジーヴズの事件簿―才智縦横の巻 (文春文庫)

前々から、オタクの一般教養として読んどかなくちゃな、と思い続けて、ようやく着手。

20世紀初頭のロンドン。気はいいが少しおつむのゆるい金持ち青年バーティには、厄介事が盛りだくさん。親友ビンゴには浮かれた恋の片棒を担がされ、アガサ叔母は次々面倒な縁談を持ってくる。だがバーティには嫌みなほど優秀な執事がついていた。どんな難題もそつなく解決する彼の名は、ジーヴズ! 世界的ユーモア小説の傑作選。

 収録作品
・「ジーヴズの初仕事」 Jeeves Takes Charge
・「ジーヴズの春」 Jeeves in the Springtime
・「ロヴィルの怪事件」 Aunt Agatha Speaks Her Mind
・「ジーヴズとグロソップ一家」 The Pride of Wooster is Wounded
・「ジーヴズと駆け出し俳優」 Jeeves and Champ Cyril
・「同志ビンゴ」Comrade Bingo
・「バーティ君の変心」Bertie Changes His Mind

現在、巷に蔓延る「執事が最強」ものの元祖。
これより前に原型となるものはあるの? セイヤーズのマーヴィン・バンター*1はこの後だよね?
毒舌と主人をないがしろにすることは別、ということを最近の作品は肝に命じてもらいたい。とりあえずは主人を立てることもできないのなら、執事を出す必要はない。


それはさておき。
黒後家蜘蛛の会*2が好きだから、これも楽しめるだろうなぁ、とは思ってたんだけど、いや、直球でハマる。
第1話の

「それから、ジーヴズ。あのチェックのスーツだが」
「は?」
「そんなにまずいか?」
「やや突飛すぎるかと存じます」
「でも、仲間の多くがどこの仕立て屋だと訊くぜ」
「間違ってもそこで注文しないためでございます」
「でも、ロンドンでも一番のいいやつなんだ」
「その仕立て屋の気立てには、わたくしも異存ございません」

のやり取りにメロメロ。


他の執事ものと違うのが、ジーヴズが真の完璧超人でありながら、自分の益にもなるように企んだり、けっこう腹黒いんだよね。
一方、主人のバーティは困ったことがあるとジーヴズをすぐに頼るのび太キャラで、おつむは緩いが気のいい愛すべき青年。いつもジーヴズに頼るのも悔しいから我を張るが、最後には素直に負けを認めるのも可愛らしい。また服のセンスが、ジーヴスを呆れさせるほど悪いのもお約束になっており、キャラクター造形はバーティの方が作りこまれていて、あくまで執事は裏方ということを知らしめてくれる。
アガサ叔母や親友ビンゴなど、脇役も過剰なほどキャラ立ちしていて、彼らに言及されるだけで楽しい。


これは他のも読まなくちゃなぁ。