LE MAGASIN DES SUICIDES
- 作者: ジャントゥーレ,浜辺貴絵
- 出版社/メーカー: 武田ランダムハウスジャパン
- 発売日: 2011/09/15
- メディア: 単行本
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10代続く老舗の「自殺用品専門店」へようこそ! どんな死に方をお望みで? 首つりロープ、切腹セット、毒リンゴにタランチュラ。 ふつうの死に方から、男らしい死に方、女らしい死に方まで、死を願うすべての人の希望を叶える商品を取り揃えております。 店はテュヴァッシュ家が代々経営していますが、おかげさまでいつもそこそこ繁盛しています。 われわれ一家はこの店にふさわしく、暗く、陰鬱で、笑ったことなど一度もありません。 だからこそ、お客様にも信用していただけるのです。 長男のフィンセントはいつも頭痛に悩まされ、頭は包帯でぐるぐる巻き。 長女マリリンはものぐさで覇気がないけど、店の雰囲気を壊したりはしません。 ……なのに、末っ子アランが生まれてからすべてがめちゃくちゃです! この子がベビーカーの中で笑うのを見たときから、イヤな予感はしていたんです……
現在、アニメ映画製作中とのことで、確かに、ヴィジュアルはティム・バートンなどの色彩に脳内変換が容易。
老舗の「自殺用品専門店」が舞台で、そこにそぐわない、陽気な第三子が生まれて困る、というブラックコメディ。
珍妙な自殺用品に、壊れたキャラクターたち。実在するなら物議をかもすだろうけど、そこはファンタジーのストーリーライン。物語として、おかしな店には、おかしな客が付きものだから、世界はそこで完結する。普通は。
しかし、この小説は、悲惨なメインテーマで笑いながら、その背景が極めて悲惨なことになっているという、実はディストピアSF。
環境破壊はもう修復できないレベル、おそらく宗教はすでに存在せず、テロリストとの戦いは完全な泥沼。実際的な意味でも、観念的な意味でも、未来がない世界。そこで唯一信じられるのが、自殺という手段。
そんな世界で、太陽のように明るいアランがもたらすのは、希望なのか、絶望なのか。