TESKERE

テスケレ (1974年) (今日の海外小説)

テスケレ (1974年) (今日の海外小説)

テスケレは単なる身分証明書ではない。それは二時間毎に更新しなければならず保有しない者は殺される。――奇抜な着想と豊かな想像力を駆使して描く、ユーモアとグロテスクとアイロニーの世界!(帯)


 収録作品
・「テスケレ」
・「プレネスティノの方位」
・「七面鳥
・「十月祭」
・「メナンドロスに関する学術講演」
・「金持ち向けのスナック・バーを開く計画」
・「幽霊の悟性」
・「大演習」
・「その日こそ怒りの日なり」

「カード」*1とか『エペペ』*2的なものかと、表題作に期待したんだけど、トルコ革命や欧米的なものの風刺でちょっと期待はずれ。
『SF万国博覧会*3で北原尚彦氏が書いているように、イタリアのファシズムを経験してきたということを頭に入れておかないと、面白みがわからない感じ。


気に入ったのは、
・「プレネスティノの方位」
 突然、隣人の退役軍人が部屋にやってきて、家具を放り出し、金網を張り始める。
 そこが潜水艦だと思い込んでいるらしい。
 住人は無事に乗り切るために話を合わせ、妻をなだめるが……
 小説として出来が良く、描かれている狂気もわかりやすい。


・「幽霊の悟性」
 幽霊が語る、自分たちと怨霊の違いとは?


・「大演習」
 憧れの職業、銃殺刑執行隊に入隊した若者。
 厳しい訓練があるが、もうずっと死刑は行われていない。
 マネキン相手の演習で、村にやってくるとどこも大歓迎でお祭り騒ぎに。 
 変テコさ加減ではこれが一番好み。
 異色作家短篇集に入っていそうな感じ。


・「その日こそ怒りの日なり」
 小さな女の子が吐いたスイカの破片が、乳母車の赤ん坊にかかったことが原因で、街中が凄惨な殺し合いに。
 なんか『2000人の狂人*4を想起してしまった(笑)