LA INCREIBLE Y TRISTE HISTORIA DE LA CANDIDA ERENDIRA Y DE SU ABUELA DESALMADA

エレンディラ (1983年) (サンリオ文庫)

エレンディラ (1983年) (サンリオ文庫)

〈大人のための童話〉として書かれた六つの短編と中編「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」を収めた、ノーベル賞作家ガルシア=マルケスの待望の傑作短編集。奇跡的な薬効を持った解毒剤をあきなうブラカマンといういかさま師(「奇跡の行商人、善人のブラカマン」)、身の毛のよだつ蜘蛛に変身させられた哀れな娘(「大きな翼のある、ひどく年老いた男」)、巨大な船の出現する不思議の海に取り憑かれた少年(「幽霊船の最後の航海」)、そして、たった一人の身寄りである孫娘に春をひさがせる冷酷な老婆(「無垢なエレンディラと……」)など、密接に『族長の秋』に繋がりながら、〈魔術的リアリズム〉の手法を駆使して、ユーモア溢れる幻想的な独自の世界を構築し、『百年の孤独』から『族長の秋』への橋渡しとなった、現代の語り部ガルシア=マルケスの抱腹絶倒の物語集。

 収録作品
・「大きな翼のある、ひどく年老いた男」Un senor muy viejo con unas alas enormes
 大きな翼を持った老人を見つけた夫婦。
 彼を鳥小屋に入れて見世物にすることに。
 鳥小屋って。
 田丸浩史の描くジジイ天使のビジュアルに脳内変換されて困った(笑)


・「失われた時の海」El mar del tiempo perdido
 海からバラの香りが漂ってくる。
 その数日後、村に富豪がやってきて、悩みを解決してやると告げる。
 深海の、死体が漂う水域が非常に幻想的で美しい。 


・「この世でいちばん美しい水死人」El ahogado mas hermoso del mundo
 大柄な美丈夫の水死体が漂着する。
 女たちは彼に惚れ、立派な葬儀をあげてあげたいと願う。
 忘れがたい短篇。
 完全に出オチながら、その水死体にまつわる想い(妄想)が現実を侵食するさまが素晴らしい。


・「愛の彼方の変わることなき死」Muerte constante mas alla del amor
 6ヶ月と11日後に死ぬ運命の上院議員
 彼の最期を運命づける少女とは?


・「幽霊船の最後の航海」El ultimo viaje del buque fantasma
 断続的に幽霊船を目撃した少年。
 しかし、村人は信じてくれない。
 そこで、またもや幽霊船が現れたときに彼がとった復讐の方法は?


・「奇跡の行商人、善人のブラカマン」Blacaman el bueno vendedor de milagros
 インチキ行商人にこき使われる少年。
 ある時を境に地下牢で拷問され、半死人の状態で放置される。
 しかし、彼は突然怪我を治す奇跡を身につけ、人々の治療を始める。


・「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」La incrible y triste historia de la candida Erendira y de su abuela desalmada
 業突く張りの祖母に、娼婦として働かされるエレンディラ
 彼女に惚れた青年と共に逃げることを考え、祖母の殺害を企むが……
 ラストの猛ダッシュの光景が、マジックリアリズム的であるとともに、なぜか笑えてしまった。


ガルシア=マルケスを1冊読むのは初めて。
現実とファンタジーが、文章的にも内容的にも地続きで、なおかつその状況をキャラクターも読者も、自然に受け入れているという事実。
また、単なる幻想味ではなく、ベタなコント的描写が、かえって力強く人々の存在感や生活感にリアリティを与えているのが独特。
下手をすると与太話で終わっちゃいそうなんだけど、そうはなってないんだよね。
お気に入りは、「大きな翼のある、ひどく年老いた男」「この世でいちばん美しい水死人」「奇跡の行商人、善人のブラカマン」あたりかな。