THE LOST BOOKS OF THE ODYSSEY

オデュッセイアの失われた書

オデュッセイアの失われた書

ホメロスの詠ったイタケの王オデュッセウスは、女神アテナの寵愛あつく知略で知られ、トロイア戦争では神への貢ぎ物と偽った巨大な木馬を使って、トロイアを陥落させたのだった。だが、船で帰国する途中、海神ポセイドンの怒りをかい、何年も海上をさまようはめになる。魔女キルケや、美しい歌で船乗りを惑わせて殺すセイレンなど、数々の困難にあい部下も船も失ったすえに、ようやくイタケへ帰還したオデュッセウスは、不在の20年間に妃ぺネロペイアにつきまとっていた求婚者らを、すべて討ち果たしたのだった。ホメロスが採用しなかった「別バージョンの『オデュッセイア』」である本書では、主人公オデュッセウスは戦場で自分の分身にでくわしたり、死んだアキレウスの身代わりにロボットを創りだしたりと、驚きの新冒険をくりひろげる。唖然とする展開あり、みごとなオチに笑わされる話あり、人生や人間心理の哀しみをしみじみと味わう話ありの、奇想と幻想に満ちた短編集である。

オデュッセイア*1のあったかもしれないエピソード、というか、要素だけを抽出し、残りは機械翻訳にかけたかのような、へんてこな部品はで組み立てられた短篇集。


お気に入りは、
・「悲しむべき発見」
 ついに故郷にたどり着いたオデュッセウス
 しかし、そこには主人前とした見知らぬ男と、年取ったペネロペイアがいた。
 それを目にしたオデュッセウスは……


・「アガメムノンと、その一語」
 トロイアの城壁前の平原の地下に宮殿を作ったアガメムノン
 彼は、オデュッセウスを初め三人の家臣に、この世の全ての知識を調べて1000ページの書物を書けと命じる。
 何年もかけて、旅から戻ってきたが…… 


・「小さな親切」
 またもや難破し、島に流れ着いたオデュッセウス
 そこで、三人の女が話し合っているのを聞き……


・「逃亡者」
 海を流され、助け上げられると、そこは戦争前の船。
 前回と同じ展開で戦争は進み……


・「ミュルミドンの泥人形」
 アキレスを説得し、参戦させようとシロス島にやってきたオデュッセウス
 しかし、彼はすでに死んでいた。
 そこで、ゴーレムでアキレスを創ることに。


・「オデュッセウスイリアス
 早く戦争を終わらせたいオデュッセウス
 ヘレネを暗殺するが、戦争は終わらない。
 戦場から逃げ、吟遊詩人として放浪する……


・「盲目」
 略奪者に目を潰された大男。
 しかし、盲目になってから、近隣の村民は彼を怖がらなくなり、平和な生活が訪れる。


・「勝利の嘆き」
 最強の敵を求めてさすらう戦士。
 皇帝アガメムノンの前に現れ、そこで最強とされるアイアスですら簡単に倒す。
 彼が向かうのは……


・「石庭」
 石の庭で暮らす女性。
 誰か来たと思っても、そこには誰もいず、孤独な生活が続く…… 


・「最後の島々」
 年老いオデュッセウス
 かつての、帰国への道のりを再度訪れる。


奇妙な話あり、しんみりする話あり、信用出来ない語り手あり、の変な話好きにオススメの短篇集。
オデュッセイア』は未読なんだけど、タイミングよく『トロイ無双*2で予習済みだぜ! とは言うものの、ちょっと心もとないのでWikipediaをあんちょこに。予習しとかないと、確実に面白さが減じます。