THE LOST BOOKS OF THE ODYSSEY
- 作者: ザッカリーメイスン,矢倉尚子
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2011/07/20
- メディア: 単行本
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ホメロスの詠ったイタケの王オデュッセウスは、女神アテナの寵愛あつく知略で知られ、トロイア戦争では神への貢ぎ物と偽った巨大な木馬を使って、トロイアを陥落させたのだった。だが、船で帰国する途中、海神ポセイドンの怒りをかい、何年も海上をさまようはめになる。魔女キルケや、美しい歌で船乗りを惑わせて殺すセイレンなど、数々の困難にあい部下も船も失ったすえに、ようやくイタケへ帰還したオデュッセウスは、不在の20年間に妃ぺネロペイアにつきまとっていた求婚者らを、すべて討ち果たしたのだった。ホメロスが採用しなかった「別バージョンの『オデュッセイア』」である本書では、主人公オデュッセウスは戦場で自分の分身にでくわしたり、死んだアキレウスの身代わりにロボットを創りだしたりと、驚きの新冒険をくりひろげる。唖然とする展開あり、みごとなオチに笑わされる話あり、人生や人間心理の哀しみをしみじみと味わう話ありの、奇想と幻想に満ちた短編集である。
『オデュッセイア』*1のあったかもしれないエピソード、というか、要素だけを抽出し、残りは機械翻訳にかけたかのような、へんてこな部品はで組み立てられた短篇集。
お気に入りは、
・「悲しむべき発見」
ついに故郷にたどり着いたオデュッセウス。
しかし、そこには主人前とした見知らぬ男と、年取ったペネロペイアがいた。
それを目にしたオデュッセウスは……
・「アガメムノンと、その一語」
トロイアの城壁前の平原の地下に宮殿を作ったアガメムノン。
彼は、オデュッセウスを初め三人の家臣に、この世の全ての知識を調べて1000ページの書物を書けと命じる。
何年もかけて、旅から戻ってきたが……
・「小さな親切」
またもや難破し、島に流れ着いたオデュッセウス。
そこで、三人の女が話し合っているのを聞き……
・「逃亡者」
海を流され、助け上げられると、そこは戦争前の船。
前回と同じ展開で戦争は進み……
・「ミュルミドンの泥人形」
アキレスを説得し、参戦させようとシロス島にやってきたオデュッセウス。
しかし、彼はすでに死んでいた。
そこで、ゴーレムでアキレスを創ることに。
・「オデュッセウス版イリアス」
早く戦争を終わらせたいオデュッセウス。
ヘレネを暗殺するが、戦争は終わらない。
戦場から逃げ、吟遊詩人として放浪する……
・「盲目」
略奪者に目を潰された大男。
しかし、盲目になってから、近隣の村民は彼を怖がらなくなり、平和な生活が訪れる。
・「勝利の嘆き」
最強の敵を求めてさすらう戦士。
皇帝アガメムノンの前に現れ、そこで最強とされるアイアスですら簡単に倒す。
彼が向かうのは……
・「石庭」
石の庭で暮らす女性。
誰か来たと思っても、そこには誰もいず、孤独な生活が続く……
・「最後の島々」
年老いたオデュッセウス。
かつての、帰国への道のりを再度訪れる。
奇妙な話あり、しんみりする話あり、信用出来ない語り手あり、の変な話好きにオススメの短篇集。
『オデュッセイア』は未読なんだけど、タイミングよく『トロイ無双』*2で予習済みだぜ! とは言うものの、ちょっと心もとないのでWikipediaをあんちょこに。予習しとかないと、確実に面白さが減じます。