BREATHERS

ぼくのゾンビ・ライフ

ぼくのゾンビ・ライフ

交通事故から目覚めたアンデイは、自分がゾンビになっていることに気づく。妻、娘と離れ、そのまま両親と同居することになったアンディは、他のゾンビたちと出会い、仲間になり、ゾンビになった自分を受け入れはじめる。なんとか人間たちとも共存しようとするが……。全編ゾンビ主観で綴られる、“脳のあるリビング・デッド”たちの『人生』と戦い、そして恋。現在世界同時多発中の『人間性を持つゾンビ』小説の究極型、待望の邦訳!

『ネクロマンティック』*1よりロマンティックで、『食人族』*2よりスパイシー。


ゾンビの一人称、というだけでちょっと構えちゃうけど、冒頭から、やはりゾンビだとひと安心(笑)
期待通り変な話だったものの、それを越えるほど変ではなかったというか……


原題の「ブリーザーズ」は生きた人間たちのことで、主人公達の口から忌み言葉として吐き出されるように、作中に出てくる人間の多くは、ひじょうに醜い。公民権運動のパロディなので、抗うべき敵が必要なのかも知れないけど、ナチのホロコーストや後の民族浄化のようなことがまかり通っている世界に、ちょっと嫌な気分。
ラストも、いかにもゾンビホラー的とは言え、それまでの公民権運動を否定するようで、個人的にはあまり納得がいかない。
また、著しい肉体的変化のあるゾンビなのだから、その時の状態で、文章に変化をつけて欲しかった。語りがゾンビである必然性が薄い。脳みそもちょっとずつ溶けてるんだし。


ジェイ・レイクの「100パーセント・ビーフのパティをダブルで」*3と食感がかなり似てる。しっかりと人格を保ったゾンビものというムーブメントの中では、まだバリエーションが少なく、同じような感じになっちゃうのかな? 
また、両作品で携挙という単語が使用されているんだけど、これはキリスト教用語。他にも、『ぼくのゾンビ・ライフ』中にはキリスト教への言及が多く、いわゆるゾンビものは、やはりキリスト教社会が基盤になっていることを意識させられる。


ロマンスも料理もよかったんだけど、いろいろとなんか惜しい作品。装丁はすごい素敵なんだけど。