BLACK SWAN

『ブラックスワン』鑑賞
金曜の夕方だったけど、そこそこお客はいて、しかも女性率高し。知らないで来てなければいいんだけど、ホラーです。
サブジャンルとしてはドッペルゲンガーものになるのかなぁ。


CMの露出通りバレエが題材なんだけど、演出や撮影がことごとく不安を掻き立てるように出来ていて、パンフでも指摘されていたけど『ジェイコブズラダー』*1を思い出すヴィジュアルだし、アロノフスキー作品では、奥歯で銀紙を噛むような印象だった『π』*2のような空気に近い。
背中の傷、謎の影、呪物のように毎回道具を並べるニナ、子供扱いする母親、とラストへの道標のようにホラーガジェットが設置されている。特に、靴の手入れを映すとともに、爪切り、ヤスリ、ささくれ、と指先への生理的な恐怖をしつこく描写。それがニナの神経質な正確を同時に表している。


やはり、主人公ニナを演じるナタリー・ポートマンが見事。肉体改造は前提(背筋がたまらない!)で、それに加えて変身していく演技。
真面目(たぶん処女)で、硬く、感情も表さず、それ故に追い詰められていく白鳥。そこに徐々に亀裂が生じ、ラストで一気に文字通り黒鳥へと化ける。
ラストこそがパラノーマルで、演技に苦しんでいる状況が日常なんだけど、ホラー的演出は逆転していて、日常のほうが張り詰めている。そのギャップで、黒鳥に変身するラストの方がしなやかになっていることが、素人にもわかる。
『レオン』*3の女の子がこんなに立派に……(笑)


黒鳥は別人ではなく、欲望を解放した姿。そうすると、ベスを事故に合わせたのもニナだったりして、と思ったり。ベスを演じるのはウィノナ・ライダー。年取ったなぁ。


痛い描写がちょっと多いけど、オススメ。