女装の剣士シュヴァリエ・デオンの生涯

女装の剣士シュヴァリエ・デオンの生涯

女装の剣士シュヴァリエ・デオンの生涯

『女装の剣士シュヴァリエ・デオンの生涯』窪田般弥白水社
シュヴァリエ*1のモデルになった人物について描かれた本。ちょっと、時代的には手前だけど、オスカルのモデルにもなってるのかなぁ。
歴史的事実を淡々と書き連ねているだけなんで、ドラマチックさには欠けるけど、そのぶん分かりやすい。


18世紀のフランス、ルイ十五世の密偵となり、ヨーロッパ情勢の裏を暗躍したシュヴァリエ・デオン。
文武に優れた美貌の騎士。ある時は少女に変装してエリザベータの宮廷に入り込み、またある時は老婆に化けて危機を脱する。
しかし、機密を多く知りすぎている身分と引換に、フランス政府に持ちかけた取引の結果の代償は大きく、八十二歳という長い人生の後半生はかなり悲惨。
イギリスで活動していた彼は、湖国に戻るために、自分が女性であるという誹謗文を逆用するも、死ぬまでの三十三年間を女として生きることを強いられてしまう。政府が彼のことをホントに女だと思っていたのか、それとも罰する意味合いがあったのかはわからないけれど、一般的には女性だと思われていた様子。


フランス革命までの二十五年間、ヨーロッパにはアヴァンチュリエ(冒険者)としか表現できないような人物が輩出されていた。デオンは、カリオストロパラケルスス、カサノヴァなどとともにそこに並べられている。
しかし、革命を境に彼らの存在は許されなくなり、国王も処刑され、ファンタジーの終わりに見える。単なるチンピラから皇帝にまで上り詰めたナポレオンが最後に現れるのが、冒険者ゲームの上がりを象徴している。