BATS OUT OF HELL

地獄のコウモリ軍団 (新潮クレスト・ブックス)

地獄のコウモリ軍団 (新潮クレスト・ブックス)

『地獄のコウモリ軍団』バリー・ハナ〈新潮社クレストブックス〉
この題名を素通りできるわけないじゃない!

五体不満足の兵士が戦場に見た地獄。妻のオナニー現場を見てしまった夫の衝撃。変態KKK主義者の愛人に一目惚れした青年の苦悩。借金まみれのパパがオカマ化した故の惨劇……。フォークナー賞作家による、どす黒い人間悲喜劇十六編。


・「老いの桟橋」High-Water Railers
・「ふたつのものが、ぼんやり、互いに襲いかかろうとしていた」Two Things, Dimly, Were Going At Each Other
・「地獄のコウモリ軍団」Bats Out of Hell Division
・「ヤープの夜:ルーンズウェント・ドーヴァーによる報告書」Evening of the Yarp: a report by Roonswent Dover
・「クリスマス教訓劇」A Christmas thought
・「悲惨日記」Dear awful diary
・「ルーグ・ルートのスパイ」The spy of Loog Root
・「母なる口腔」Mother mouth
・「至高のスキャンダル」Scandale d'estime
・「発覚! ロックスターに過去なし」Revealed: Rock Swoon has no past
・「モナは二階でアレを欲しがる」Upstairs, Monay bayed for Dong
・「ハーマンはよその州」Herman is in another state
・「デンタル」Dental
・「このお目出度き種族」This happy breed
・「よう、煙草と時間とニュースと俺のメンツはあるかい?」Hey, have you got a cig, the time, the news, my face?
・「ニコディマスの断崖」Nicodemus Bluff

アメリカ南部(行ったことないけど)の臭いが強い短篇集。また、水辺がそばだから、過剰でない湿気も漂っている。また、死や老いがテーマになっていながら、酔っぱらいのトールテールのようなおおらかさ、ぼんやり感があるのも特徴。


お気に入りは、
・「ふたつのものが、ぼんやり、互いに襲いかかろうとしていた」
 妻を事故で射殺してしまった過去を持つ、老ジャンキー作家。
 彼の友人の、犬のような容貌と性格になってしまう病気に罹った老医師が、発作を起こして走りだしてしまう。
 作家はバイクを駆って彼を追う!


・「地獄のコウモリ軍団」
 四肢が吹き飛ばされ、記録係となった兵士。
 彼が見る戦場は、死してなお僚友たちが戦い続ける地獄だった。


・「ヤープの夜:ルーンズウェント・ドーヴァーによる報告書」 
 ヤープと呼ばれる化物を乗せてしまった青年。
 彼の目撃談は?


・「ルーグ・ルートのスパイ」
 耳が鋭く、遠くの物音が聞こえてしまうため、山奥で暮らす青年。
 彼は望遠鏡で覗きをする生活を送っていた。
 その存在に気づいた男は、彼を捕らえようとするが……
 

・「ニコディマスの断崖」
 借金だらけだった無学の父。
 しかし、彼はチェスだけは負け知らずで、対局時に貴婦人が彼に降りてきて、圧倒的な強さを誇っていたのだ。