オオカミのゆめ ぼくのゆめ

『オオカミのゆめ ぼくのゆめ』三田村信行ほるぷ出版
日本全国のちびっ子を『おとうさんがいっぱい』*1で恐怖のどん底に陥れた(と噂される)作者の短篇集。


収録作品
・「おばさんの庭」
 退屈しているおばさん。
 ある日、営業マンらしき男に、新開発した植物に庭の土が合っていると言われて、ねこの木を買ってしまう。
 栽培が面倒だが、その植物の世話をするうちに、それが可愛くなってきて……
 夢も希望もなし度は、本書中ではマイルドな部類。
 それでも、物語が終わった後に訪れるであろう、うつろな生活は重い。 


・「砂の少女」
 指先を切り、血に砂が混ざっていることに気づいたサチコ。
 怪我をしないように、すっかり引っ込み思案になってしまう。
 ある日、奇病研究所を見つけて行ってみると、進行性砂血症と診断。
 このままだと、全身から砂が吹き出して死んでしまうと告げられ、薬をのむことに。
 3ヶ月ほど経ち、その医者が詐欺師と言うニュースが流れ……
 やはり夢も希望もない。完全にホラーです。
 30年前に読んでたら、絶対に砂場で遊ばなかったな。


・「ゆめの村へ」
 旅の六部。
 行き倒れになりそうなところを看病してくれた猟師に、お礼に話を聞かせる。
 彼は不老不死の専任が暮らす村を探しているという……
 収録作品の中では、大人向けの短篇集に入っていそうな幻想譚。
 まぁ、題名に反して夢も希望もないんだけど。


・「生きる時間」
 借金で、一家心中する家族。
 しかし、彼は三途の川を渡れず生き返ってしまう。
 ところが、彼らは写真の料理を食べられる超能力を身につけていた。
 どんなご馳走も食べ放題で、食費もかからないため、借金返済も目処が付き始める。
 明るくなる一家だが……
 夢も希望もなさでは、この作品がベスト。
 お子様は、これ読んだら人生に絶望するよ。


・「オオカミのゆめ ぼくのゆめ」
 ぼくになった夢を見るオオカミ。
 オオカミになった夢を見るぼく。
 学校で正体がバレそうになるぼくと、山を追われるオオカミ。
 二つの夢が交差し……
 夢そのものの話だけど、まぁ希望はありません(笑)
 一番児童書っぽい話だけど、目覚めたときの失見当識はどうしてくれよう。


児童書だからって、ほのぼのしていたり、教訓があると思ったら大間違い!
毎度、児童書かどうかは別にして、後味悪い作品ばかりだなぁ〜
物語が終わっても人生は終わらず、ぽっかり開いた無力感は大人の方が色々思うものがあるはず。
お気に入りは、「砂の少女」「ゆめの村へ」「生きる時間」