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アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う (英国パラソル奇譚)

アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う (英国パラソル奇譚)

『アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う』ゲイル・キャリガー〈ハヤカワFT532〉
〈英国パラソル奇譚〉第1弾。
あらすじだけだと、好物っぽいんだけど……

19世紀イギリス、人類が吸血鬼や人狼らと共存する変革と技術の時代。さる舞踏会の夜、われらが主人公アレクシア・タラボッティ嬢は偶然にも吸血鬼を刺殺してしまう。その特殊能力ゆえ、彼女は異界管理局の人狼捜査官マコン卿の取り調べを受けることに。しかしやがて事件は、はぐれ吸血鬼や人狼の連続失踪に結びつく――ヴィクトリア朝の歴史情緒とユーモアにみちた、新世紀のスチームパンク・ブームを導く冒険譚、第一弾

最近流行りの二つ、スチームパンクとパラロマをくっつけてみました、という仕上がり。
ただ、ヴィクトリアン・ロマンスのパロディにしては、ちょっとHOTすぎるのが趣味でないなぁ。また『高慢と偏見*1を読めばわかるように、身分の差および「憎たらしいけど気になるアイツ」という様式が、狼男と人間に置換えられているのはお約束として、アレクシアの特殊能力〈ソウルレス〉が、オールドミスである理由付けにして欲しかった。魂がないと、人格的にどういうマイナスがあるのかイマイチわからないんだよね。耳年増ってこと?
もう一方のスチームパンク要素もなぁ……。もっとガジェット満載で、倫敦のあちこちから蒸気がしゅうしゅうしてるのが見たかったのに、下手な書割レベルの薄さ。普通MI6とかディオゲネスクラブとか期待しちゃうじゃない(笑)。これ一作で判断するのもなんだけど、作者はあまりスチームガジェットに興味ないのかも。SFM2010年6月号*2によると、向こうでもスチームパンクか否かと論争になってるとか。
オタクガジェット満載の倫敦としては『ドラキュラ紀元*3、『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』*4、『文学刑事サーズデイ・ネクスト*5などには遠く及ばない。
と肝心の舞台設定がちょっと残念なことになってるんだけど、キャラクターはひじょうに立ってる。主人公はもとより、脇役も印象的で、個人的にはアケルダマ卿がお気に入り。教授もいいね。


ここで切るほどつまらなくはなかったので、6月に出る2巻も一応チェック。


ところで、〈暗殺者ヴラド・タルトシュ〉の続きは諦めたほうがいいの?