TALES OF THE SHE WOLF

狼女物語?美しくも妖しい短編傑作選

狼女物語?美しくも妖しい短編傑作選

『狼女物語 美しくも妖しい短編傑作選』ウェルズ恵子・編〈工作舎
以前読んだ『ドイツ幻想小説傑作選*1』が全く趣味にあわず、これも似たような読後感だろうなぁ、と予想しつつ着手。

眩しい日光のもと、官能の喜びに満たされて変身……ひとひらの雪のような優しいキス、それは死の刻印……青い花の列のなかを歩く、まぶしく光る永長い金髪の女……待ちこがれた抱擁とともに引き裂かれる心臓……エロスとタナトス、聖性と魔性がせめぎあう美しくも妖しい狼女の物語がはじまる

 収録作品
・「イーナ」……マンリー・バニスター
・「白マントの女」……クレメンス・ハウスマン
・「ブルターニュ伝説 向こう岸の青い花」……エリック・ステンボック
・「コストプチンの白狼」……ギルバート・キャンベル
・「狼娘の島」……ジョージ・マクドナルド
・「狼女物語」……キャサリン・クロウ


19世紀から20世紀前半の作品を集めてるんで、思ってたとおり古いんだけど、いやいや、思いの外楽しめました。
編者が研究家で解説が面白い。狼女ジャンルには、「血統もの」「精霊もの」「悪魔もの」とあるらしい。正直、素人には区別がつかないんだけど、狼男と狼女の文学的差異はわかった。狼女は、女性が欲望(=獣性、野性)をストレートに発露できない時代に発明された装置のため、奔放で、当時としては描写がエロティック。彼女たちの正体は最初から明示されているため、正体がバレるかバレないか、というスリルではなく、むしろ、脱いだら凄いわよ(笑)ということを愉しむ小説。
一方の狼男は、男性性をそのまま過剰にしているだけだから、淫靡さは薄い。
個人的お気に入りは、「イーナ」「白マントの女」「狼女物語」あたり。「狼女物語」はヒストリカルロマンスでした(笑)