DARKSHIP THIEVES

闇の船 (ハヤカワ文庫 SF ホ 9-1)

闇の船 (ハヤカワ文庫 SF ホ 9-1)

『闇の船』サラ・A・ホイト〈ハヤカワSF1801〉

アテナは物音で目を覚ました。誰かが船室内にいる! 泥棒? それとも……!? 地球の権力者階級〈善き人びと〉の一員である父親の宇宙船内で、なぜかその部下に襲われたアテナは、からくも救命ポッドで脱出、追跡をふりきるため危険なパワーツリーの森に逃げこんだ。だがそこで遭遇したのは、はるか昔、地球を追放され死に絶えたはずの“ミュール”が乗る異形の船だった! 伝説の闇の船に囚われた美少女の波乱万丈の冒険。

恋愛成分多めだけど、SFロマンスではなく、ロマンティック冒険SFといったところ。
あくまで持論だけど、ロマンスものは全てのガジェットが、ロマンスを成立させるためだけに存在しているため、もっと面白く転がせそうなネタも二人がくっついちゃえばおざなりにされる(ことが多い)。ところが、この作品はわりとSFネタはちゃんと回収される。旧人類と新人類の関係とか、キットの前妻との秘密、地球の陰謀とか悪くない。
とは言っても、ロマンスは強く、主人公ふたりが無事ならOKという構造はやはりセカイ系か。行方不明のエデン人はどうなったの? また、パワーツリーの仕組みも人間には理解不能、でスルーなのはなぁ。これに限らず、シンギュラリティ的超科学が、以前のナノマシンみたいにブラックボックス扱いで済ませちゃうのはズルイと思う今日このごろ。


ロマンスは手が出しにくいけど、ロマンティックなSFは読みたいなぁ、という方にオススメ(笑)


それにしても、節電とか放射線被曝とか、嫌なピンポイントを突いてきた小説だったなぁ。