PATTERN RECOGNITION

パターン・レコグニション

パターン・レコグニション

『パターン・レコグニション』ウィリアム・ギブスン角川書店
唯一未読だったギブスンの長編をようやく着手。
いつのまにやら、結構なお値段になっちゃってるんだもんなぁ……

ケイスは新製品の売れ行きを直感的に判断できる「クールハンター」。ファッション業界を中心とした企業から相談を受け、そのジャッジにより生計をたてている。彼女の興味の中心は〈フッテージ〉。〈フッテージ〉はネット上にランダムに流されている断片的な映像で、ストーリーもないが、抜群の完成度を誇る。クライアントからロンドンでの仕事を得たケイスは友人のフラットに居をかまえる。最終的なタスクは〈フッテージ〉の正体を操ること。広告界の新しい分野を切り開きたいというのが目的だ。半強制的に探索に協力することになったケイスは、タキという日本人が〈フッテージ〉の正体の一部を解読したという情報を仕入れ、日本へと旅立った……。サイバーバンクの王者ギプスンが、現実世界を舞台に描いた、スピード感あふれる極上のハイブリッド・エンタテインメント!

結果的に、今読めてよかったかも。


SF成分はなく、〈電脳〉三部作*1や〈橋〉三部作*2を期待していると肩透かしを食らうことになると思うけど、個人的にはかなり楽しめた。この作品と舞台を同じくする『スプーク・カントリー』*3よりも面白かったかな。
すでに8年前の作品だけど、ネットにアップされる謎の断片映像という設定は、おそらく現在の方がイメージしやすいと思う。
また、今から20年以上前に幻視された未来の千葉シティが、21世紀に入って現在の東京として実体化するさまに眩暈がしそう。ギブスンの描く、リアルなのに作り物めいた日本の情景はたまらないなぁ。それにしても、なぜビックル(笑)。〈橋〉三部作でもブラックブラックガムが出てきたけど、なぜそこに着目する!(笑)
ガジェットもエピソードも突飛なものはなく現代なんだけど、骨格はやはりSFで、20年前なら確実にサイバーパンクなんだよね。この遡ってSFを実感する感覚はギブスンならでは。
当時読んで、イマイチな感想を持った方は、今読むと又違う印象を持つと思うのでオススメ。


苦労して買ったんだけど、『スプーク・カントリー』と一緒に文庫落ちしそうな……