STRANGE TOYS

ストレンジ・トイズ (ストレンジ・フィクション)

ストレンジ・トイズ (ストレンジ・フィクション)

『ストレンジ・トイズ』パトリシア・ギアリー〈河出書房新社 ストレンジ・フィクション〉
ストレンジ・フィクション第2弾。コンスタントに出るなぁ。

9歳の少女ペットは、畏怖する長姉の秘密を知ったことで、危険に満ちた魔術的世界へと足を踏み入れてしまう。トラブルを避けるべく、両親と次姉とともにあてどない逃避行の旅に出たペットは、悪意に満ちた超自然的な力が、愛する家族に狙いを定めていることを知る。ペットだけが家族を救える――その力をもつのがどの儀式なのか、どの呪物なのか、ただわかりさえすれば……。ケリー・リンク、ティム・パワーズらが激賞。長らく翻訳が待たれてきた、禍々しい魅力に満ちた衝撃の書がついに刊行。もっとも生々しく、もっとも魅力的な悪夢だけがもつ、突拍子もない幻覚に満ちた『オン・ザ・ロード』。

なんだろ、この生々しさは。ファンタジーの対極にあるようなのの表現がまとわりつく作品。
男のハードに女のソフトをインストールすると、動作不良を起こすのを久々に感じた。
フェミニズム的とか言うのではなく、根源的な女性性みたいのが漂っていて、ストーリーとは違う次元で異質な肌触りがある。ケリー・リンクが解説書いてるのも納得。
三部構成が、主人公の少女時代、ティーンエージャー、三十代となっていて、それぞれが初潮、初体験、妊娠を表しているように読め、男としてはなおさら居心地悪い。
その上に重ねられているのが、何者かと魔術的結婚を果たした姉からの逃亡劇というダークファンタジー。こちらにあるのが、根源的なまじない。本人しか、もしくは本人にもはっきりと理由付けられないルールで集められたガラクタを呪物とする感覚やすぐ隣に異界が存在する感覚は、子供時代の自分を思い返せば多かれ少なかれ感じるものがあるはず。だからこそ、他人のそれを覗き見ることに違和感を覚える。
9歳の第一部が最も長く、読み応えもある。幼いがゆえに魔術的世界に近いため様々なものが見えるが、逆に核心に近づけない。一方、成長するとともに魔術的世界は狭まるが、魔術の根源が追いやすくなる構成は面白い。
ただ、もやもやした読後感なので、明朗なファンタジーを期待しているとスカされるかな。