LA CIUDAD Y LOS PERROS

都会と犬ども

都会と犬ども

『都会と犬ども』マリオ・バルガス=リョサ〈新潮社〉
長らく絶版だったんだけど、2010年度のノーベル文学賞受賞効果で、この度復刊。

厳格な規律の裏では腕力と狡猾がものを言う、弱肉強食の寄宿生活。首都リマの士官学校を舞台に、ペルー各地から入学してきた白人、黒人、混血児、都会っ子、山育ち、人種も階層もさまざまな一群の少年たち=犬っころどもの抵抗と挫折を重層的に描き、残酷で偽善的な現代社会の堕落と腐敗を圧倒的な筆力で告発する。

純粋、友情、闘争、裏切り、挫折、権力、従属、別離……と3年間の士官学校生活の中に人生の縮図がある。まぁ、紹介文にあるような、小難しいことを考えずとも、残酷な青春モノとして飽きさせず、何より小説として面白い。
何人かの視点で描かれており、本名やあだ名が入り乱れ、最初は誰が誰だか混乱するんだけど、徐々に「本音と建前」的に、それぞれのキャラクターの内面が見えてくる。この構造に慣れてくる頃になると、今度は読者が思い描いていた人物像とは全く異なる独白が現れ、これがミスリードを誘って、ラストにちょっとした驚きが待っている。
士官学校内で装った姿と外とのギャップに、愛情すら覚える。
物語の面白さと語りの面白さが、同時にラストの驚きにつながるのが巧み。しかも、ある人物の、士官学校に入る前、卒業してからラストの時間軸まで、さらにそれからの人生、全てがそこに収束しているんだよね。
また、社会の腐敗と偽善は、士官学校が終わっても、むしろそれからの方が激しくなる。そんな中、ガンボアの態度に希望を見ずにはいられない。