EARTHBOUND

アースバウンド ―地縛霊― (ハヤカワ文庫NV)

アースバウンド ―地縛霊― (ハヤカワ文庫NV)

『アースバウンド-地縛霊-』リチャード・マシスン〈ハヤカワNV1229〉

夫の不倫で険悪になった夫婦関係を修復しようと、かつてハネムーンで訪れたローガンビーチに別荘を借りたクーパー夫妻。だが妻のエレンはその家にただならぬものを感じる。いっぽう夫のデイヴイッドは、エレンの外出中に突然訪ねて来た若い美女マリアンナと知り合いになった。あからさまに誘惑するマリアンナに魅かれるデイヴイッド。だが近くに住む老婦人の話がすべてを一変させた……巨匠が描く、本格ゴースト・ホラー

ホラー巨匠によるパラノーマル・ロマンス(笑)
背後に潜む怪奇現象、超常現象と常識との溝にはまって、身動きできなくなっていくといったホラーの定石は薄い。
その代わり、登場人物全員が何かに縛られているという束縛感がある。
主人公は、最初から夫婦関係の危機に縛られている。にもかかわらず、誘惑に簡単に堕ちるさまには突っ込まずにはいられない(笑)。彼は夫婦関係の修復、不倫の罪悪感、幽霊の攻撃、常識と様々なものにがんじがらめにされてしまう。
一方で、別荘に取り付いている幽霊は絶大な力を有しているものの、様々な制約に縛られており、それが終盤の対決で効いてくる。地縛霊に対して、精神病院に閉じ込めるという返しはなかなか燃えた。
また、主人公の妻も、夫の改心というのぞみに縛られているが故に、事態に巻き込まれてしまう。
さらに、老婦人も縛られていて、ある意味、最も身動きができない。
幽霊ではない呪縛を解くことによって、人生の次のステップが踏めるのだ。


「Steel」*1の映画はまだちょっと先なのね。