きょうも上天気
- 作者: フィリップ・K・ディック,カート・ヴォネガット・ジュニア,他,大森望,宮尾和孝,浅倉久志
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/11/25
- メディア: 文庫
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2010年2月に亡くなった浅倉久志の翻訳作から編んだSF短篇集。
何度も映像化されているジェローム・ビクスビイの表題作の他、フィリップ・K・ディック「時間飛行士へのささやかな贈物」、カート・ヴォネガット・ジュニア「明日も明日もその明日も」、アーシュラ・K・ル・グイン「オメラスから歩み去る人々」、J・G・バラード「コーラルDの雲の彫刻師」など、そうそうたる顔ぶれの、意表を突く企みに満ちた永遠の名作を、浅倉久志の名翻訳でおくる珠玉のSF短編傑作集。
さすがに、ほとんど既読。
とは言え、オールタイムベストは何度読んでもオールタイムベスト。
でも、浅倉訳という縛りしかないんだから、ベストだけで編めるのはずるい(笑)
まだ、ひとつも読んだことがないという幸せな方にはこれから是非読んでもらって、簡単に感想を。
・「オメラスから歩み去る人々」……アーシュラ・K・ル・グィン
何度読んでも凄い。
オメラスに留まる人、歩み去る人、どちらも否定出来ないんだよなぁ。
強烈に印象に残る。
・「コーラルDの雲の彫刻師」……J・G・バラード
『ヴァーミリオン・サンズ』*1は正直、そんなに好きじゃないんだけど、この作品はは好き。
というか、これだけでよくね?(暴言)
気怠いリゾート地と雲の彫刻という幻想の儚さが見事に噛み合っている。
『ヴァーミリオン・サンズ』が復刊できない、そんな理由があったのね。
・「ひる」……ロバート・シェクリイ
これまた、何度読んでも面白い(怪獣好きとして)
バルンガの元ネタとされている作品。
『塊魂』*2を初めてやったとき、「ひる」を思い出したのは俺だけ?
・「きょうも上天気」……ジェローム・ビクスビイ
『トワイライト・ゾーン』*3の第3話(だよね?)の原作なんだけど、遥かに嫌な話。
どんな恐ろしいことが起きているのか描写されていないのが恐い。
・「ロト」……ウォード・ムーア
題名からラストはわかると思うんだけど、なんとも後味悪い。
聖書みたいに絶対的なものがないから、夫の独善性ばかりが目立つ。
ちなみに続編も輪をかけて嫌展開。
・「時は金」……マック・レナルズ
西洋史(世界史)の裏でこんな真相が……的な話は好物なんで、
そういう意味ではちょっと変化球のこれも楽しめた。
歴史が全て無意味というのがなんとも。
・「空飛ぶヴォルプラ」……ワイマン・グイン
創造物にしっぺ返しを食らうのは定番だけど、
創った理由も、仕返しもたちの悪い冗談に終始しているのが面白い。
・「明日も明日もその明日も」……カート・ヴォネガット・ジュニア
皮肉なラストは、現代の失業&高齢化社会に被るなぁ。
・「時間飛行士へのささやかな贈物」……フィリップ・K・ディック
会う人会う人に『未来医師』*4で判断するなと説教される日々を送ってますが、短篇は面白いね。
我思う故に我ありの我を信じられないけど、でも我が決定しちゃうという強迫性がなんともたまらない。