INSECTE

ギリシア日記で読了本がたまっちゃったんで、書いてかないとね。

だから、ひとりだけって言ったのに

だから、ひとりだけって言ったのに

『だから、ひとりだけって言ったのに』クレール・カスティヨン〈早川書房

母と娘のあいだには、甘くも美しくもない秘密がある――気鋭の女性作家が鮮やかに冴えた筆致で綴る、毒と悪意と、それでも消えぬ愛に彩られた女たちの物語。華麗にして不様、繊細にして無神経、痛々しくも軽やかな19色の母娘模様をご覧あれ。

 収録作品
・「だから、ひとりだけって言ったのに」J’avais dit une
・「昆虫/アンセクト」L’insecte
・「アノラックとファーブーツ」Un anorak et des bottes fourrees
・「私の親友」Ma meilleure amie
・「彼らはレストランでシャンパンを飲んだ」Ils ont bu du champagne au restaurant
・「手紙の時間」L’heure du courrier
・「きっと治せる」On peut y remedier
・「素敵な女性にならなくちゃね」Tu seras une femme, ma file
・「うそつき」Menteuse
・「ピンクの赤ちゃん」Un bebe rose
・「仲違い」rupture
・「心をこめて」On t’embrasse affectueusement
・「代理ミュンヒハウゼン症候群」Munchhausen par procuration
・「はずかしいこと」La honte
・「パパは悪い人じゃないわ、ママ!」Mon pere n’est pas mechant, mamam
・「戦争」Se battre
・「おバカさんとひも結び」Noeud-noeud
・「母は絶対に死にません」Ma mere ne meurt jamais
・「十年で十回の手術」Dix operations en dix ans


生理的嫌悪感を催さずにはいられない、なんとも毒々しい表紙。
それに劣らぬ毒を持った内容。しかも猛毒ではなく、じわじわ侵されていく。
全てママと娘の物語で、夫の影はひじょうに薄い。男としては、原題(『昆虫』)どおり異質な生物の物語で、発せられるフェロモンを感じることは出来ないけど、その行動に魅了され、嫌悪し、しかし、やはり本質は理解出来ない。そして、彼女たちも同種が故に、理解し、拒絶しあう。
居心地悪さというより、居場所がない読書感。女性の感想も聞いてみたい。


お気に入りは、「だから、ひとりだけって言ったのに」「アノラックとファーブーツ」「私の親友」「ピンクの赤ちゃん」「はずかしいこと」「母は絶対に死にません」あたり。