THE KING OF YELLOW

黄衣の王 (創元推理文庫)

『黄衣の王』Ｒ・Ｗ・チェイムバース〈創元推理文庫F530-02〉
クトゥルー神話に組み込まれた（引用？）によって、日本でも知られている「黄の印」のチェイムバースの
国内初短篇集。意外なことに出てなかったのね。

・「評判を回復する者」The Repairer of Reputation
・「仮面」The Mask
・「ドラゴン路地にて」In the Court of the Dragon
・「黄の印」The Yellow Sign
・「魂を屠る者」The Slayer of Souls

「魂を屠る者」以外の4本が、各国で発禁となった戯曲『黄衣の王』に触れた者たちの運命を描いた連作。この『黄衣の王』の扱いが絶妙で、作中には断片しか出てこないし、それが単なる戯曲なのか宇宙的秘密を記したものなのかもわからない。また、登場人物が見舞われる狂気が『黄衣の王』そのものにかかわるのか、それとも読んだことによって単に狂気を引き寄せてしまうのかも不明。その描かれていない闇を読者に補わさせる手際が見事。
この中では「評判を回復する者」と「黄の印」が飛び抜けてるなぁ。この二つだけでも、読んで損なし。


「魂を屠る者」は長編。イェーズィーディ族って聞き覚えがあると思ったら、『悪魔の花嫁』*1で引用されてたのね。
「かつて巫女として教団の神殿で霊能力の修行を積んだアメリカ人女性が、合衆国政府の捜査官の要請を受けて八人の妖術師と死闘を繰り広げる」って中二？　というかなんて山風？（笑）こちらは普通にクラッシックな伝奇もの。ただ、舞台が1919年で、男性キャラが全く役に立ってない、というのはなかなか珍しいのかな？　それ言うと主人公と敵以外要らないんだけど。


解説はいつもながら読み応えあるんだけど、やはり上から目線なのがなぁ……


今回の原音主義：ボニトって、いわゆるボンネットのこと？

*1:悪魔の花嫁 (創元推理文庫)