変愛小説集II

変愛小説集2

変愛小説集2

『変愛小説集II』岸本佐知子・編〈講談社
ひじょうに楽しみにしていたアンソロジー第2弾。


・「彼氏島」……ステイシー・リクター
 特にやりたいこともない女子大生。
 船が難破して、たどり着いたのは、イケメン原住民ばかりが棲む島だった!
 逆ハーレムものビッチものかと思いきや。


・「スペシャリスト」……アリソン・スミス
 局部に痛みがあり、何人もの医者に診てもらっている女性。
 やっとのことで原因がわかるが、彼女の体内には荒涼とした極寒の平原が広がっていたのだ。


・「妹」……ミランダ・ジュライ
 友人から妹を紹介すると言われた還暦過ぎの男。
 いつもすれ違いで彼女と会えないが、いつしか妄想恋愛するようになる。
 ついに友人が、家で3人で飲もうと言ってくれて……
 これはいい話(笑)
 予想外のラストながら、しっかり変愛。
 お一人様の老後の備えをしたいものです。


・「私が西部にやって来て、そこの住人になったわけ」……アリソン・ベイカ
 幻の生き物となったチアガールを追ってモンタナの山奥までやってきた女。
 レクチャーを受けながら追跡を続けるが、彼女はついに諦める……
 アメリカンドリーム、アメリカ性の喪失として読めるのかな?
 まぁ、そんなこと抜きにして、コテコテのウェスタンと青春もののパロディ及び変な話で大変美味。
 レネは、女装したダニー・トレホにしか見えなくなってしまった(笑)


・「道にて」……スティーヴン・ディクソン
 道をひた歩く夫婦。
 途中、妻は亡くなってしまったようで……


・「ヴードゥー・ハート」……スコット・スナイダー
 格安で古びた大豪邸を買った、付き合って5年のカップル。
 そろそろプロポーズを、と考えているが、彼には悪い癖が……
 ラストの審判が、切り刻まれるような緊張が漂い、息苦しい。
 ただ、刑務所に咎められずに入れちゃうのがちょっと……


・「ミルドレッド」……レナード・マイケルズ
 どうでもいい言い合いをしているカップル。
 そこに友人が二人訪ねてきて……
 あらすじが書けない作品だなぁ。
 なんだか訳が分からない短篇なんだけど、強烈に記憶に残る。


・「マネキン」……ポール・グレノン
 ある日、妻がデッサン用の木製人形だと気づいた夫。
 なんとかして、彼女の口から認めさせようとするが……


・「『人類学・その他一〇〇の物語』より」……ダン・ローズ
 アルファベット順に挙げられた、奇妙な艶笑譚。なんかに似てると思ったら、アルチュール・ド・パンスの『PECHES MIGNONS』*1か。
 ホントは題名どおり100編あるんだけど、抄訳でも十分すぎるほど面白い。
 お気に入りは、会報、有料、操、趣味、レズビアン、部分、リハーサル、沈没、眠る、ぺてん。


・「歯好症」……ジュリア・スラヴィン
 全身に歯が生えてきた女。
 そんな彼女を愛し続ける夫。
 「まる呑み」*2といい、作者は口フェチ?(笑)


・「シュワルツさんのために」……ジョージ・ソーンダース
 ヴァーチャル体験ができる店をやっている男。
 妻を亡くしたショックから、老婦人のボランティアをやっている。
 彼女の面倒くらいは見てやりたいが金がない。
 ある日、強盗に遭遇したことから、あるアイデアが。
 ソーンダースは初めてなんだけど、短篇集読むかなぁ。

 
知らない作家ばかりだから予想がつかず、しかも変な話ばかりなので大変満足。
みんなよかったけど、特にお気に入りは、「妹」「私が西部にやって来て、そこの住人になったわけ」「ミルドレッド」「『人類学・その他一〇〇の物語』より」「歯好症」あたり。