HE IS LEGEND : An Anthology Celebrating Richard Matheson

ヒー・イズ・レジェンド (小学館文庫)

ヒー・イズ・レジェンド (小学館文庫)

『ヒー・イズ・レジェンド』クリストファー・コンロン編〈小学館文庫ヒ1-4〉
リチャード・マシスン作品を題材にしたトリビュート・アンソロジー


 収録作品
・「スロットル」−「激突!」*1から着想を得た作品 ……ジョー・ヒルスティーヴン・キング
 儲け話を不意にされたバイクチーム。
 その金をめぐって、リーダーとその息子の間で不穏な空気が。
 何故か、途中で見かけたトラックがチームを襲い始める!
 親子の対立話を、この合作で読めるという時点で勝ち(笑)
 内容は、普通にB級ホラー的に楽しめる。


・「リコール」−「種子まく男」*2の続篇 ……F・ポール・ウィルソン
 平穏な町に越してきては、隣人たちをお互い憎しみ合わせような嫌がらせを繰り返す男。
 また同じように始めるが、何者かが妨害してることに気づく。
 一体、誰が?
 オリジナルが好きなんだけど、こちらもなかなか。


・「伝説の誕生」−『アイ・アム・レジェンド*3序章 ……ミック・ギャリス
 好男子のネヴィルを、本心では嫌っている隣人のベン。
 パーティーを早めに抜け、ひとり寝ていると……


・「OK牧場の真実」−『ある日どこかで*4続篇 ……ジョン・シャーリー
 西部時代の研究者。
 ビリー・ザ・キッドの血をひく女性と結婚するが、その出生のせいで彼女は鬱気質で、自殺してしまう。
 彼はあるタイムトラベルの方法を実践し、OK牧場でビリーが殺されず、ちゃんとした家庭を築くように目論むが……


・「ルイーズ・ケアリーの日記」−異聞『縮みゆく人間』*5 ……トマス・F・モンテルオーニ
 化学物質を浴びてしまい、日に日に縮んでいくスコット。
 その間、妻は何を考えていたのか……
 「伝説の誕生」とちょっと似てるかも。
 郊外の奥様の禁じられた午後的な部分も(笑)


・「ヴェンチュリ」−「陰謀者の群れ」*6から着想を得た話 ……リチャード・クリスチャン・マシスン
 背中にしこりができた、神経症の男。
 様々な事が、脅迫的になり…… 


・「追われた獲物」−「狙われた獲物」*7の続篇  ……ジョー・R・ランズデール
 離婚調停中の成功した作家。
 アンティークショップで呪いの人形を手に入れる。
 それが掛けていた鎖を外してしまい……
 最後の雄叫び、それ!? というちょっと間の抜けた感じや、狂った笑いを誘う人形のヴィジュアルが、かなりランズデール風味。


・「地獄の家にもう一度」−『地獄の家』*8序篇  ……ナンシー・A・コリンズ
 ベラスコ・ハウスの2度目の調査で、何が起きたのか?


この手の本のお約束で、オリジナルを知らなくても楽しめる、というのがあるけど、少なくとも序章や続編として書かれた作品は元を知らないと楽しめないと思う。特に、「リコール」「伝説の誕生」「ルイーズ・ケアリーの日記」はオリジナルを知っているのが前提かなぁ。
「追われた獲物」はわかってやってるんだと思うんだけど、ガジェットが共通してるだけのホラー映画続編的テイスト。
そんな中で、「地獄の家にもう一度」はオリジナルを知っていれば無論楽しめるし、これ単品でもしっかりホラー短編として成立しているのが上手い。


訳されているのは、原著からの一部で、「運命のボタン」の続編はタイミング的に入れるべきでしょ〜
個人的には、「男と女から生まれて」を入れて欲しかった……