THE MAN WHO TURNED INTO HIMSELF
- 作者: ディヴィッド・アンブローズ,渡辺庸子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2010/02/20
- メディア: 文庫
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最新翻訳だけど、アンブローズのデビュー作。
出版社を経営するリックは、愛する家族に囲まれ幸せに暮らしていた。銀行での会議の最中、異様な感覚に襲われ、狂ったように駆けつけると、そこには事故で潰れた妻の車が。だが、気づくと事故にあったのは彼自身で、妻は無事で息子はいないと告げられる。さらに職業も住まいも違う。リックは並行世界に意識だけ紛れ込んでしまったのだ! はたして、元の世界に戻れるのだろうか?
喉ごしはいいけど、イマイチ腹にたまらないなぁ……
初見は『バタフライ・エフェクト』*1みたいな話かと思いきや、並行世界での夫婦問題がメインで、世界は飛び回らず(笑)
量子論的多世界解釈に期待する「選択」は目立たず、単なるパラノイアかも知れないという偏執さもないので、全体的にライトな印象。ちょっと、ご都合主義にも見えちゃうけど。
ただ、そのライトさが、ある意味スペースオペラ的加速度を持ったラストに突き抜けていく。多元世界の外側に立った男ならではの選択の苦悩はないけれど、究極のエゴである人間原理の残酷さが実感できる作品ではあった。
デイヴィッド・アンブローズの未訳はあと一作だけなのね。