LO SCIALLE ANDALUSO

アンダルシアの肩かけ

アンダルシアの肩かけ

『アンダルシアの肩かけ』エルサ・モランテ〈河出書房新社
モラヴィアの妻でもある、エルサ・モランテの短篇集。

 収録作品

  • 「灯火を盗んだ男」Il ladro dei lumi
  • 「眼鏡の男」L’uomo dagli occhiali
  • 「祖母」La nonna
  • 「天使の通り」Via dell’ Angelo
  • 「秘密の遊び」Il gioco segreto
  • 「同級生」Il compagno
  • 「アンドゥッロとエスポージト」Andurro e Esposito
  • 「いとこのヴェナンツィオ」Il battesimo
  • 「意気地のない男」Un uomo senza carattere
  • シチリア人の兵隊」Il soldato siciliano
  • 「ドンナ・アマーリア」Donna Amalia
  • 「アンダルシアの肩かけ」Lo scialle andaluso

この目で見たものと、夢で見たもの、想像が等価である子どもたちを主題にした作品が多かったかな。それと後味が悪い作品も少なくない。
お気に入りは、
・「眼鏡の男」
 曜日の記憶がおぼつかない男。
 彼は、女学校から下校してくる生徒を待っていた。
 しかし、話をしたかった生徒は死んだと聞かされる。
 友人が彼女の家に行き、男の話をすると……
 どこからどこまでが夢で、しかも誰のものなのかはっきりしない作品。 
 男も実在なのか、少女の性的な影かなのか。


・「祖母」
 息子を溺愛する母。
 しかし、彼が結婚したのを機に、行方をくらませてしまう。
 双子が生まれ、しばらくして戻ってきた母。
 子どもたちは彼女のお話に夢中になるが……
 ラストの後味悪さは格別。


・「いとこのヴェナンツィオ」
 ちょっと足りないヴェナンツィオ。
 ある日、ぽっくり死んでしまう。
 葬式に集まった子どもたちの態度がうまい。
 大人から見れば的外れなんだけど、彼らの論理ではちゃんと通ってるんだよね。


・「意気地のない男」
 休み中、田舎に帰った青年。
 そこに、冴えない容姿の女性がいて、男たちは彼女に求愛する振りをして小馬鹿にしていた。
 彼はそういう行為は嫌いだったが…… 
 これも、ラストは嫌な気分になるなぁ。


上に書いた作品は比較的印象に残ってるんだけど、全体的には残念ながら、ちょっと趣味でなかったなぁ。
完全なる想像だけど、キリスト教(か他の倫理)を前提としたテンプレートに沿って書かれていて、それ自体に読み手が合わないと、話自体にイマイチ乗れない感じ。
読みにくいわけではないのに時間がかかり、実は内容もあまり残ってないんだよね。