CHASING THE DEAD

屍車 (集英社文庫)

屍車 (集英社文庫)

『屍車』ジョー・シュライバー〈集英社文庫シ17-1〉
久々の集英社文庫ホラー。

スーのもとに幼い娘を誘拐したという電話が。犯人の指示するルートで、朝までに到着しなければ娘の命はないという。車を走らせる最中、犯人の要求はエスカレートし、車内では怪現象が起き始める。事件の影には、20年前の連続殺人鬼、スーの少女時代が係わっていた……

結論から言うとハズレ。
300ページ弱という短さが唯一の救い。
ハートシェイプト・ボックス*1といい『チックタック』*2といい、自動車+幽霊型ホラーと相性が悪いのか?
一晩の物語で、刻々と時間が過ぎていくんだけど、そこにスピード感や切迫感が感じられないんだよなぁ。雪嵐の夜の印象も薄いし、制限時間以内に到着しなければならない、というスリルだけだと弱い気がする。もう一つ主人公を追いこむ存在が欲しいよね(どんどん若返っちゃうとか)。
幽霊と同じ出オチである怪獣が天災と考えるのなら、そこに遭遇してしまうことに理由は必要ない。幽霊や怪異もたまたまそこに居合わせてしまっただけ、というこれ以上はない強固な理由なき理由を楽しめればいいんだけど、個人的にどうも幽霊の場合はロジックを求めちゃうんだよなぁ。少なくとも、この作品においては、単に行き逢ったわけではなく、敵の意思がはっきりと主人公をターゲットにしており、呪術的儀式が発端で、メインネタでもあるんだから、そこの説明を端折るべきではないと思うんだよなぁ。「幽霊だから!」と言い切るには、ハッタリが弱い。かといって敵の目的もなんかなぁ。なんで、20年間鳴りを潜めていたの?
まぁ、儀式の説明がないことに目をつぶるとしても、ロブスターが生き返るんだから、○○も戻っちゃったらラストにカタルシスが産まれたと思うんですけど(笑)