Cuerpos y ofrendas
- 作者: カルロスフエンテス,木村榮一
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1995/07/17
- メディア: 文庫
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いわゆる、ラテンアメリカ文学とはちょっと味わいが違う。と言うか、南米=マジックリアリズムっていう一括りは誰が言い始めたの? どう考えても、その認識は単純すぎるよね?
とは言うものの、ドアを開けたら「こんにちは」と神様がいるのはラテンアメリカらしいか。
・「チャック・モール」
亡くなった男の日記。
そこには、彼が買ったチャック・モール(雨神)像が動き始め、支配されていく様が記されていた。
「フエンテスって何書いてる人?」と訊くと、たいてい返ってくる、印象深い作品。
本当に神なのか、それとも変なおっさんにつきまとわれていただけなのか、どっちとも解釈できるんだけど、見てはいけないものを見てしまった感は、かなりショッキング。
・「生命線」
処刑が間近に迫った男たち。
脱獄し、リーダー格は仲間を見捨てながらも、ゲリラに合流するが……
・「最後の恋」
成功してきた老企業家。
若い女を買い、休暇を楽しむが……
・「女王人形」
ふと、幼い頃に公園でよく遊んだ女の子のことを思い出した男。
彼女の家を訪ねてみるが、そこにいたのは寡黙な老人。
家に上がると、祭壇があり……
これも「チャック・モール」と同じようなオチなんだけど、見てはいけない、見なければよかったと言うグロテスクさはこちらの方が上か。
このタブー感が、神との遭遇を表しているのかなぁ。
・「純な魂」
兄に対して近親相姦的な感情を抱いている妹。
スイスに行った彼に会いに行く途中、それまでの手紙を回想する。
解説読むと、確かにアイデンティティの物語として読めるんだけど、それをぬきにしても、短篇ミステリとして面白い。
個人的には、これが一番よかったかな。
・「アウラ」
亡き夫の手記をまとめるために、老婦人に雇われた青年。
給料はいいのだが、その家の様子は不気味。
彼女の世話をする姪のアウラに一目惚れし、仕事が終わったらこの家から出ようと誘うが……
ドアを開けた向こうが異界というのはよくあるけど、ラテンアメリカの場合、それが隔てていたり、1ステップ必要、という感じじゃないんだよね。こちらの世界と同居しているが故のドア。だから、彼らは家の中にいる。