FRAGILE THINGS
- 作者: ニール・ゲイマン,金原瑞人,野沢佳織
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2009/10/30
- メディア: 単行本
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詩も含めた、ゲイマンの短篇集。既訳短篇はほとんど収録されている。
通称、青い本(笑)
収録作品
- 「翠色の習作」A Study in Emerald
- 「妖精のリール」The Fairy Reel
- 「十月の集まり」October in the Chair
- 「秘密の部屋」The Hidden Chamber
- 「顔なき奴隷の禁断の花嫁が、恐ろしい欲望の夜の秘密の館で」Forbidden Brides of the Faceless Slaves in the Secret House of the Night of Dread Desire
- 「メモリー・レーンの燧石」The Flints of Memory Lane
- 「閉店時間」Closing Time
- 「森人ウードゥになる」Going Wodwo
- 「苦いコーヒー」Bitter Grounds
- 「他人」Other People
- 「形見と宝」Keepsakes and Treasures (Keepsakes and Treasure : A Love Story)
- 「よい子にはごほうびを」Good Boys Deserve Favors
- 「ミス・フィンチ失踪事件の真相」The Facts in the Case of the Departure of Miss Finch
- 「ストレンジ・リトル・ガールズ」Strange Little Girls
- 「ハーレクインのヴァレンタイン」Harlequin Valentine
- 「髪と鍵」Locks
- 「スーザンの問題 」The Problem of Susan
- 「指示」Instructions
- 「どんな気持ちかわかる?」How Do You Think It Feels?
- 「おれの人生」My Life
- 「ヴァンパイア・タロットの十五枚の絵入りカード」Fifteen Painted Cards from a Vampire Tarot
- 「食う者、食わせる者」Feeders and Eaters
- 「疾病考案者性喉頭炎」Diseasemaker's Croup
- 「最後に」In the End
- 「ゴリアテ」Goliath
- 「オクラホマ州タルサとケンタッキー州ルイヴィルのあいだのどこかで、グレイハウンド・バスに置き忘れられた靴箱の中の、日記の数ページ」Pages from a Journal Found in a Shoebox Left in a Greyhound Bus Somewhere Between Tulsa, Oklahoma, and Louisville, Kentucky
- 「パーティで女の子に話しかけるには」How to Talk to Girls at Parties
- 「円盤がきた日」The Day the Saucers Came
- 「サンバード」Sunbird
- 「アラディン創造」Inventing Aladdin
- 「谷間の王者――『アメリカン・ゴッズ』後日譚」The Monarch of the Glen
これだけ収録されていると一言で概要を伝えるのも難しいんだけど、「物語」の物語が多い印象。「物語」を物語ることによって、「物語」が形成されていく物語。特に、「髪と鍵」「おれの人生」「指示」などの詩にそのエッセンスが見て取れる。
お気に入りは、
・「翠色の習作」
旧支配者たちによって治められている世界。
王族の一人が何者かに殺され、ロンドン唯一の顧問探偵の元に解決の依頼が。
既読なんだけど、オタク的くすぐり満載で、楽しい一品。
ただ、「顧問探偵」は引っかかる。「諮問探偵」でよかったんじゃないの?
・「顔なき奴隷の禁断の花嫁が、恐ろしい欲望の夜の秘密の館で」
ゴシックホラーを書く青年。
彼は、純文学を目指しているというのだが……
・「メモリー・レーンの燧石」
少年時代。
友達の家に遊びに行く途中、電灯に女が立っていて……
怖い話系のショートショート。
オチも何もなく、ただ起きたことだけが書かれているんだけど、それが余計に気味悪い。
・「閉店時間」
幼い頃の経験談を語る男。
近所にある屋敷に入りこんだ子どもたち。
その庭には、子ども用の小さな家があって……
これも怪談系。
小屋とかミニチュアの家は、なんで気持ち悪いんだろ?
・「髪と鍵」
ゴールディロックスをテーマにした詩。
物語が伝播し、変成していく過程。
・「おれの人生」
詩。
自分の人生には何も面白い話はないという男。
・「形見と宝」
表の世界にはけっして顔を見せない大富豪。
彼に仕えるスミスは、彼のために伝説の種族に守られた少年を見つけるが……
『999−妖女たち−』*1にも収録されてたんだけど、全く記憶にない……
莫大な金を持ったトラブルシューターとして、シリーズ化できそうな。
・「よい子にはごほうびを」
コントラバスを弾いている少年。
腕は別によくない。
ある日、その学校出身の俳優とその恋人が見学にやってくる。
演奏してみてくれと頼まれた彼は……
・「ミス・フィンチ失踪事件の真相」
みんなでサーカスに行ったところ、舞台に引っ張られていったミス・フィンチがそのまま……
サーカスという場所が、状況のコントロールを許さず、それに従うしかないというのが、何が起きているのかわからず、恐ろしい。
・「疾病考案者性喉頭炎」
新しい病名を考えてしまう奇病のレポート。
ミエヴィルの「ある医学百科事典の一項目」*2と同じく架空病気アンソロジーに載った作品。
これ、他のも読んでみたいんだよなぁ。
・「ゴリアテ」
巨人症の男。
彼はある日、この世界は神の如き存在によって作られた仮想現実だと知る。
本当の現実世界では、異星人の攻撃を受けているというのだ。
システムは復旧され、彼の人生も再開したが……
『マトリクス』みたいだと思ったら、その公開に合わせて書かれた短篇だとか。
「スーザンの問題」は好きな構造なんだけど、『ナルニア国ものがたり』を映画以外知らないので、残念ながら楽しめず。
「谷間の王者」は『アメリカン・ゴッズ』*3の後日譚で楽しみだったんだけど、あってもなくても特に変わらなかったかなぁ。