燃える天使
- 作者: 柴田元幸
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2009/10/24
- メディア: 文庫
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『僕の恋、僕の傘』の文庫落ち……なんだけど、半分近くが新収録。
収録作品
・「僕の恋、僕の傘」……ジョン・マクガハン
・「床屋の話」……V・S・プリチェット
・「愛の跡」……フィリップ・マッキャン
・「ブロードムアの少年時代」……パトリック・マグラア
・「世の習い」……ヴァレリー・マーティン
・「ケイティの話一九五〇年十月」……シェイマス・ディーン
・「太平洋の岸辺で」……マーク・ヘルプリン
・「猫女」……スチュアート・ダイベック
・「メリーゴーラウンド」……ジャック・プラスキー
・「影製造産業に関する報告」……ピーター・ケアリー
・「亀の哀しみ アキレスの回想録」……ジョージ・フラー
・「燃える天使 謎めいた目」……モアシル・スクリアル
・「サンタクロース殺人犯」……スペンサー・ホルスト
正直、ちょっと趣味ではなかったんだけど、後半に好みの作品がかたまっていて、それなりに満足。とはいえ、他の作品も意外と記憶に残っている。
お気に入りは、
・「床屋の話」……V・S・プリチェット
電車を待つ間、床屋に入った男。
先に髪を刈っていたのは幼馴染みだという。
席に着くと、彼がどういう男か話し始める……
これは会話通りの内容? それともミステリ?
個人的には「沈黙と叫び」*1みたいに味わったんだけど。
・「ブロードムアの少年時代」……パトリック・マグラア
犯罪性精神病専門のブロードムア精神病院の院長を父に持った男の回想。
マグラアの父親が本当にブロードムアの院長で、これは自伝。
『博士と狂人』*2に出てきた精神病院みたいだと思ったら、本当にそうでした。
・「猫女」……スチュアート・ダイベック
近所から子猫を預かり、それを洗濯機で溺死させている老婆。
狂った孫と暮らしているが、だんだんと手に負えなくなり、周りの人間も猫の処分を頼まなくなる。
そのうち、町は野良猫があふれてきて……
近所のキチガイ婆さんが、町全体の狂気のストッパーになっていた、逆割れ窓理論のような作品(笑)
崩壊の過程、ビジュアル、後味の悪さ、と非の打ち所がない。
柴田アンソロジーのレギュラー、ダイベック。
「僕たちはしなかった」*3「パラツキー・マン」*4とよかったけど、個人的にはこれはベストかなぁ。
・「メリーゴーラウンド」……ジャック・プラスキー
町にやってきた移動メリーゴーラウンド。
子どもたちが乗るが、故障で止まってしまう。
そこで父親たちが、手で回し始めるが……
狂騒感が素晴らしい。
・「影製造産業に関する報告」……ピーター・ケアリー
大ヒット商品である、様々な理想や絶望を見せてくれる影。
かく言う私も影依存者だ。
「アメリカン・ドリームズ」*5も好きだったんだけど、長篇も読んでみようかなぁ。
・「燃える天使 謎めいた目」……モアシル・スクリアル
蝋燭をつけてしばらくすると、小さな天使が見えてくる。
天使たちは火に引き寄せられ、燃え尽きてしまう……
よくわからないけど、なんか気持ち悪い。
・「サンタクロース殺人犯」……スペンサー・ホルスト
ある年、サンタクロースが何者かに殺され続ける。
誰もサンタをやらなくなり、一人の女性がサンタの扮装をするが、なぜか彼女は殺されない。
そのうち、女性たちが競ってサンタクロースをやるようになり……
「風が吹けば……」的な展開に、全く脈絡のないラストで吹いた。