コミックで世界を解く── 魔術師アラン・ムーアの世界

フロム・ヘル 上

フロム・ヘル 上

フロム・ヘル 下

フロム・ヘル 下

10/23にジュンク堂新宿店で催されたトークイベント、「コミックで世界を解く── 魔術師アラン・ムーアの世界」に行ってきた
話し手は、訳者の柳下毅一郎とラッパーの宇多丸
ジュンク堂内で「キ○ガイ」連発(笑)


レポート書くのは苦手なんで、聴きながら思う所を。


まずは、資料として配られた第五章のスクリプトの一部の解説。
ウォッチメン*1スクリプトもひじょうに細かく指示していたけど、『フロム・ヘル』はそれ以上で、もう書簡みたい(ちなみに『League of Extraordinary Gentlemen』*2の指示も凄い細かい)。
キャンベル自身の調査にも任せている部分が大きいようで、ムーアのスクリプトでは、ヒトラー家は一軒家のように指示されている(作中ではアパート)。
また、五章22ページの何気ないやりとりにそんな深いジョークになっていたとは! というか、全ページこんな調子か!? 読み切れないよ!


フロム・ヘル』は1ページ7コマで構成されていて、6コマでストーリー、1段ぶち抜きの7コマめで風景を描いている。
コマの強弱でストーリーを進めていく日本の漫画とは、設計思想自体からして違う(どちらがいいと意味ではなく)。


最初の方で出てくる「第四の次元」が本作のテーマの一つになっていて、過去・現在・未来は同時に存在し、時間はすでにすべてを経験しており、そうならば、あらゆる土地で、過去も未来も顕現できるはず。Dr.マンハッタンを主人公した感じ。


宇多丸さんは『最終結論』*3まで買ったらしいけど、けっこうどうでもいい内容だとか。その雑な機構を再構築させ、見事に歯車がはまった状態にしたのはムーアの力。


ラストはそうか。ムーアの言うように、解釈は読者それぞれに委ねられているけど、カモメ取りと絡めると、柳下さんはフィクションとしての救済を与えたのではないか、とのこと。そうなると、それまでの描写や台詞が連鎖的に繋がって鳥肌が立つ。やはり再読、再々読必至。


柳下さんのロンドン聖地巡礼の画像。
やはり、ロンドン行きたいなぁ。


その他ムーア作品の紹介。
『Big Numbers』はムーア挫折の作品。コントロールフリークの彼にアーティストのビル・シンケヴィッチが壊れてしまったそうで、2巻目で未完。
A全の紙に12×48のキャラクター表を作り、「ニール・ゲイマンをビックリさせようと思った」と宣ったとか。
『Black Dossier』*4は訳すこと自体が不可能っぽい。
『Lost Girls』出ないかなぁ。


アラン・ムーアが魔術大会で、五芒星のことでファンに迫られたときのエピソードはいい話(笑)
本人はオルタナですべてをの権利を所有していなければ自分の作品と認めていないようで、『スワンプシング*5は捨てて、『ウォッチメン』はたぶん家にあると思う、と言っているとか。
シンプソンズ』のムーア登場の回は見たかったので、おまけで流していただけたのは嬉しかった。


とにかく、アメコミ興味ない人も、『フロム・ヘル』読もうよ!