BAD MONKEYS

バッド・モンキーズ

バッド・モンキーズ

『バッド・モンキーズ』マット・ラフ〈文藝春秋
どうしようか悩んだんだけど、大いなる宇宙意思により着手。

殺人で逮捕された女の話を聞く精神科医。彼女は、光線銃のような武器で、悪人を退治する組織の殺し屋だというのだ。彼女が語る、組織との出会いや奇想天外の冒険とは?

陰謀論、妄想、都市伝説、中二病、信用できない語り手、の区別が全くつかない怪作。
陰謀論こそが真実、という『フーコーの振り子*1や〈イルミナティ〉三部作が思い浮かぶ。圧倒的な情報量と勢いで説得力のある(説得されるかどうかは別)の上述二作に比べると、こちらはタランティーノ的ダベりというか、ひじょうにチープでコミック的。でも、そのチープさこそがひじょうに魅力的。クロスワードのキーが指示になってたり、後部座席に斧を持った男がうずくまっていたら喜ぶしかないでしょ!? 
同時に、精神病的妄想を読んでるようでもあり、そこに不安を感じたりもする。
このコミック的展開と精神病的不安を両輪にラストまで突っ走り……何とも言えない非現実感。この手の小説であまり感じたことのない読後感だなぁ。
個人的には、もう一ドンデンして、もっと煙に巻いて欲しかったけど、現実を上滑り感じとしては、これでいいのかな。


何はともあれ、ひじょうに楽しめました。あまりオススメしないけど(笑)
ちょっとダメージを受けやすい装丁(これもいい!)なんで、コレクターは新刊買いした方がいいかと。