DAS GEHEIMNIS DES PUPPENSPIELERS

人形遣いの謎

人形遣いの謎

人形遣いの謎』クリスティアン・ヴァルスツェック〈未知谷〉

ナポレオン戦争後のヨーロッパ。彫刻の巧みな腕を持つマルティンは、町にやってきた天才的な人形遣いのメヴィウスに惹かれ、彼と共に旅立つことに。マルティン作の見事なマリオネットも相まって、一座の公演はどこに行っても大盛況。メヴィウスの目的である、ロシア公演の推薦状も手に入れる。しかし、メヴィウスの頭痛と精神状態は徐々にひどいものに。一方、彼を追う男たちが……。

YA小説だからなのか、リーダビリティはすこぶるいい。だからといって、内容が薄いかというとそんなことはない。
主人公のビルドゥング・ロマンスではあるけれど、正体不明の人形遣いの存在感が圧倒的。物語は、歴史物なのか、ファンタジーなのか、それともミステリなのか判然としないまま、ラストまで一気読み。
現実なのか、幻想なのかなかなか見極められない物語に対して、その合間を行き来するマリオネットとロウソクの明かりを中心に据えているのが巧みで、夢幻と物語に引き込むアイテムとしては非常にいいチョイス。旅行中に見たマリオネット劇場を思い出しました。
謎の真相は、日本人には馴染みのあるオチなんだけど、あれって西洋が元ネタと聞いたような……。作中では東洋に原型があるって言ってるけど、どっちが正しいのかしら?