PERDIDO STREET STATION

ペルディード・ストリート・ステーション (プラチナ・ファンタジイ)

ペルディード・ストリート・ステーション (プラチナ・ファンタジイ)

『ペルディード・ストリート・ステーション』チャイナ・ミエヴィル〈早川書房 プラチナ・ファンタジイ〉

巨大駅ペルディード・ストリート・ステーションが聳える都市国家ニュー・クロブゾン。様々な種族が暮らすこの街で、統一場理論の研究を続ける科学者アイザックのもとに、鳥人族〈ガルーダ〉のヤガレクが訪れる。彼は大罪を犯し、切り取られた翼を復活させて欲しいと頼む。一方、アイザックの恋人で唾液彫刻家の甲虫人間リンは、暗黒街のボスから仕事を依頼されるが、その姿は異様なものだった。飛翔の研究を始めたアイザックは、闇の仲買人から謎のイモ虫を入手する。しかし、それは危険なスレイク・モスの幼虫であり、成虫となって逃げ出すと、街に大災害を引き起こし始めた。仲間と共にスレイク・モスの退治を考えるアイザックだが、様々な組織から追われる事になってしまい……

超好み! なんでもあり(但し好物だけ)のごった煮世界観の勝利だなぁ。
ブレードランナー』をファンタジー世界に転移させたかのような、グロテスクで猥雑な過密都市が舞台の箱庭小説。ちょっと魔界都市〈新宿〉に似てるかも。


ストーリー自体は単純に怪獣(巨大生物)パニックもの、というテイストなんだけど、次々に出てくる本筋に関係ないアイデアが魅力的。悪魔は出てくるは、巨大ロボは出てくるは、ウンディーネは出てくるは、ミギーは出てくるは……
SFでしかあり得ないガジェットとファンタジーのガジェットが接合され、つなぎ目はけっして滑らかではなく、呆気にとられる事もしばしば。でも、そのいびつな傷跡に、まさに作中に出てくるリメイドように目が惹きつけられる。特に怪物やフリークの悪趣味のセンスが素晴らしく、書いてる本人が楽しそう。


キャラクターたちも、ファンタジー的予定調和な行動をすると見せかけて、それぞれの信条で動き、街全体を覆う非情の影からは逃げられない。運命はあまりにも残酷。


リンの彫刻エピソードにもっと意味を持たせて欲しかったけど、読んでる間はどっぷりとニュー・クロブゾンの汚穢に漬かってて、気にならず。
シリーズのつづきも是非読みたいなぁ。
ところで、パルゴラク教団に入るにはどうしたらいいですか?