THE BRAINS OF RATS

器官切除 (ライターズX)

器官切除 (ライターズX)

『器官切除』マイケル・ブルームライン〈白水社 WRITERS X〉

  • 「ラットの脳」 The Brains of Rats
  • 「器官切除と変異体再生 -症例報告」 Tissue Ablation and Variant Regeneration: A Case Report
  • 「ドミノ・マスター」 The Domino Master
  • 「溺れてしまえ」 Drown Yourself
  • 「CWとのインタビュー」 Interview with C.W.
  • 「男の恩寵を捨てて」 The Glitter and the Glamour
  • 「家事」 Keeping House
  • 「華麗なる魅惑」 Shed His Grace
  • 「暖かさの約束」 The Promise of Warmth
  • 「ウェット・スーツ」 The Wet Suit
  • 「そのもの」The Thing Itself

小説としては趣味のタイプではなかったんだけど、本当に切れ味鋭いという表現どおりの描写は一読の価値あり。
表題作と「男の恩寵を捨てて」、「そのもの」は人間が切り刻まれていく様を描いているんだけど、冷たいメスが肉体を開いていくような読書感は他にはない。それは、人体破壊ではなく、感情が入りこまない病理的解剖に他ならない。その描写そのものは怜悧で、グロテスクさはないんだけど、それを作り出している周りの状況は悪趣味の極み。
他の作品はダークファンタジー、ホラーとしてよくできていると思うんだけど(「ドミノ・マスター」と「家事」はかなりいい)、この作者で読まなくてもいいかも、と言う感想。