THE KING IS DEAD : Tales of Elvis Postmortem
- 作者: ポール・M.サモン,Paul M. Sammon,杉原志啓
- 出版社/メーカー: 音楽之友社
- 発売日: 1998/12/10
- メディア: 単行本
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短篇、書評、エッセイありのエルヴィス・プレスリー・アンソロジー。
エルヴィスは、養老院でミイラ男と戦った人、くらいの認識しかないんだけど、書いてる面子がけっこう豪華で、最近、偶然に存在を知り早速着手。
収録作品
- 「序」…… ポール・A・サモン
- 「エルヴィスは生きている」……リン・バレット
- 「泥棒はグレースランドに侵入する」……ローレンス・ブロック
- 「靴屋さんの物語」……ルイス・シャイナー
- 「エルヴィス原論」……デイヴィッド・マレル
- 「エルヴィスは死んだ。なぜおまえは生きている?」……ジョイス・キャロル・オーツ
- 「傷もの」……ルー・リード
- 「映画評『ジス・イズ・エルヴィス』」……ロジャー・エバート
- 「書評『エルヴィス』」……マーティン・エイミス
- 「コレクターズ・アイテム」……J・S・ラッセル
- 「忘れ得ぬ人」……グリール・マーカス
- 「ウォント」……クリストファー・フェイ
- 「バーニング・ラブ」……ロバート・ザスリー
- 「キングと私」……スティーヴン・A・マンズィ
- 「ダブル・トラブル」……チェト・ウイリアムソン
- 「王者の帰還」……D・ビーチャー・スミス二世
- 「エルヴィス対ゴジラ」……マイケル・リーヴス
- 「聖エルヴィスに関する覚書」……クライヴ・バーカー
- 「王者の聖宝 -博物館の公式カタログ抄録」……ナンシー・A・コリンズ
- 「ハート・オブ・ロックンロール」……ポール・M・サモン
- 「イーグル・ケープ」……ヴィクター・コーマン
『ビートルズ・ファンタジー』はストーリーがかなり音楽と直結していたため、曲名だけだとさっぱりわからない人間にとっては、イマイチ楽しめなかったんだけど、エルヴィス・プレスリーは完全にイコン化していて、その存在だけで話になっちゃうんだよね(曲は出てくるけど)。死後の偶像となった彼しか知らないから、何が凄かったのかはよくわからないんだけど、彼自体が文化になった影響力は何となく理解できた。「実は生きていた」て言うのがネタではなく、1ジャンルを形成するような芸能人って他にあまり見ないよなぁ。
お気に入りは、
・「泥棒はグレースランドに侵入する」……ローレンス・ブロック
女性編集者から依頼されたバーニィ。
その内容は、誰も見たとことがないグレースランドの2階の写真を撮ってきて欲しいというものだった。
泥棒バーニィ・シリーズの一編。
個人的にはこれが一番収穫かな。ローレンス・ブロック自体ほとんど読んだことがないので、無論初読。
この1作だけで判断できないけど、かなり好みかも。
・「エルヴィス原論」……デイヴィッド・マレル
エルヴィスの授業を始める文化論の教授。
しかし、彼は徐々にエルヴィスに取り憑かれていき……
レコードの回転数がどんどん早くなっていくかのように狂騒的になっていく教授……
・「コレクターズ・アイテム」……J・S・ラッセル
闇市場で、有名人の変態的な写真を扱うバイヤー。
ベティ・ペイジマニアにエルヴィス・コンベンションに付き合わされ、取引の材料として渡された写真は……
・「ウォント」……クリストファー・フェイ
金を貯めて、ある施設にやってきた女性工員。
部屋に通され、待っていると……
・「バーニング・ラブ」……ロバート・ザスリー
死んだはずなのに、なぜか動いているのを発見したマネージャー。
酒場でステージを開くと、超満員に。
しかし、激しく動くと体のあちこちがもげ……
タブロイド紙の下世話さは、この作品が一番濃縮されているかなぁ。
ラストのまさに骨までしゃぶり尽くそうとする感じもいい。
・「キングと私」……スティーヴン・A・マンズィ
エンバーマー一家の元に運ばれてきたエルヴィスの遺体。
離婚してで戻った妹が、その唇の処理を任され……
グロテスクさ、彼と一緒にいられるだけで幸福、が表された短篇。
・「ダブル・トラブル」……チェト・ウイリアムソン
エルヴィス・ファンの天才科学者。
彼は時間を遡る方法を発見し、エルヴィスの双子の兄弟を助け、Wプレスリーの世界に書き換えることを目論むが……
エルヴィスがアメリカ文化に与えた影響は、歴史と直結しているという短篇。
そこまでの凄さはリアルタイムでないとおそらくわからず、この辺がビートルズの扱いと違うんだよね。
・「エルヴィス対ゴジラ」……マイケル・リーヴス
低予算映画ばかりを扱う制作者。
相棒が東京から見つけてきたフィルムは、エルヴィスの死の直前に撮られた、「エルヴィス対ゴジラ」と言う映画だった……
どうしたって、題名からして読みたくなる1作(笑)
しかも、ひどすぎて見たくなる。「フランケンシュタイン対地底怪獣バラゴン」みたいな感じ。
・「王者の聖宝 -博物館の公式カタログ抄録」……ナンシー・A・コリンズ
エルヴィス教の聖宝カタログ。
こういうの遊びは好きだなぁ。
・「イーグル・ケープ」……ヴィクター・コーマン
DVに耐える母と娘。
彼女はファンのようにグッズなどは全く持っていなかったが、曲だけは常に愛していた。
暴力をふるわれても、彼の歌を聴くだけで幸せで……
神話化したエルヴィスの物語。
神話はまだしも、聖人と同等に扱われる歌手って。
ところで、エルヴィスもゴジラもある、ランズデール短篇集は出ないのかな〜