STORIES OF DARK FANTASY & HORROR

新・幻想と怪奇 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1824)

新・幻想と怪奇 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1824)

『新・幻想と怪奇』仁賀克雄・編〈早川書房HPB1824〉
英語ができるわけでないので、訳文についてはひとまず置いといて(飲み込みにくかったり、味が足りないところはあったけど)、「新」なんてついてるから、00年代以降のミスマガからのセレクションを期待したら、30年前の復刊と言われても納得してしまうような内容。ほとんど既訳だしなぁ。確かに、昔のアンソロジーや雑誌を掘り起こすのは面倒なんだけど。
と言いつつ、全く未読なんですが。

 収録作品

お気に入りは、
・「こまどり」
 傷つき、もう生きながらえないこまどりを見つけた少年たち。
 二人は楽にしてやろうと石を投げつけるが……
 この生理的嫌悪感は、幼少時のトラウマに触れそう……
 どうせなら、ついでに「壜づめの女房」も入れればよかったのに(笑)


・「ジェリー・マロイの供述」
 芸人コンビ、ジェリーとジーン。
 ジーンの美しい妻、ステラはいつも遅くまで一緒にいる二人に嫉妬する。
 彼女はコンビを解消させようとするが……
 途中でオチは気づいちゃうけど、上手いです。 


・「虎の尾」
 万引き女性が持っていたバッグ。
 そのバッグには、アルミ製のものならどんなものでも入った。
 向こう側に違う世界とつながっていることに気づいた学者は、それをこちら側に引っ張り出そうと考えるが……
 ある意味破滅SFだと思うけど、ラストの絵は笑える。


・「切り裂きジャックはわたしの父」
 自分の父は切り裂きジャックだと独白する男。
 その真実は?
 最初、文章がよくわからなかったんだけど、ネタ的にひじょうに好み。
 「グレイストーク卿、真実を語る」とは関係ないのかしら?


・「暗闇のかくれんぼ」
 以前、かくれんぼの最中の事故で女の子が死んだ屋敷。
 数年後、そこでスミーと呼ばれる、かくれんぼに似たゲームをしていると……
 ひじょうにオーソドックスで、展開も読めるだけにゾッとする。
 怖い話系の「四隅の怪」に感触が似てるかな。


・「万能人形」
 大暴れする息子に手を焼く芸術家夫婦。
 作品を壊され、殺意が沸くほど。
 成長する自動人形を見つけ、息子の遊び仲間として与えると……
 ブラックなラストに笑える。


・「スクリーンの陰に」
 何十年もエキストラをしている老人。
 彼には若い頃、同じようにスターを目指していた恋人がいたが、撮影中の事故で亡くなっていた。
 あるとき、サイレント映画の群衆に彼女がいて……
 どうと言うこともないストーリーなんだけど、ハートウォーミング(だよね?)なラストはけっこう好きかなぁ。