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東京へ飛ばない夜

東京へ飛ばない夜

『東京へ飛ばない夜』ラーナ・ダスグプタ〈ランダムハウス講談社


東京へ向かっていたジャンボ機。しかし、悪天候のため、とある国に臨時着陸。ホテルが見つからなかった13人は、閑散とした空港で退屈しのぎに、それぞれ夜話を始める……


・「仕立屋」
 小さな町に住む腕のいい仕立屋。
 偶然やって来た王子に服を依頼され、豪華な材料を取り寄せ、腕を奮うが……


・「過去をつむぐ男」
 遠からず、人々のの記憶力がゼロになるという。
 そこで、全国の監視カメラから、それらの一人一人の映像をパッケージ化し、
 思い出代わりに売る計画が持ち上がる。
 歴史を愛し、唯一記憶を失わない青年がトラウマになるような映像をカットしていくが……


・「富豪の眠れない夜」
 あらゆるものを手にしている富豪。
 しかし、彼は眠ることが出来ず、そのせいで子供もいなかった。
 そこで知り合いの学者の手によって、子供を設けるが、
 産まれてきた子供は……


・「地図屋の館」
 世界中の地図を作っている男。
 トルコの砂漠地帯で行き倒れになっているところを老婆に救われる。
 彼女は、自分の娘を妻にしてくれと頼むが……


・「店」
 魔法のクッキーが中ったカップル。
 それを使うと、マンハッタンの店に変身してしまう。
 そこで売られる服が評判となり、二人は大金を稼ぐが……


・「高架下の少年」
 高架下に育ち、人々から様々な相談を受ける青年。
 彼はそこから得た情報で、近隣のマーケットを独占しようとする大物のために働くが……


・「ちょっとしたこと」
 平凡な一家。
 しかし、家の前に建てられたスピード防止帯で……


・「東京ドール」
 起業し、仕事にのめり込む男。
 愛していた妻ともぎくしゃくし、その溝を埋めるかのように、
 等身大のリアルドールを自作するが……


・「イスタンブールの逢瀬」
 トルコの女商人。
 たまたま停泊した船乗りに一目惚れするが、彼に残された時間は一日。
 1年後の再開を約束するが……


・「チェンジリング
 人間に紛れて暮らすチェンジリングと呼ばれる種族。
 妻にばれたため、パリの町を放浪する途中、死期の近い老人に出会う。
 彼の代わりにある言葉を探すことにするが、そんな中、天然痘が発生し、
 パリが封鎖されることに……


・「地下室の取引」
 人の心や欲望を読むことができる少女。
 彼女は有力者ばかりが集まる地下クラブで人気を博すが、
 その中の一人の子供が産みたくなり……


・「幸運な耳掃除屋」
 中国の田舎に産まれた耳かきが上手い青年。
 彼は成功を目指して都会に出ると、持って生まれた運で成功していくが……


・「こんな夢をみた」
 レンタルビデオ店でそこそこの成功を収めた映画好きの男。
 しかし、経済危機であえなく閉店。
 そこで彼は、人の夢を録画して、放映する仕事を思いつくが……


それぞれの話は、変な設定から始まり、その設定とあまり脈絡なく、また違う変なオチで終わる、という変な話ばかりで、なかなか楽しめるんだけど、それぞれを縦に貫く軸というか、奥行きがないので本当に変な話を並べただけでおしまいなのが残念。
それとも、世界を共有しているという考えこそが幻想で、奇妙に聞こえる話は話者にとっては現実。各人が生きている(知っている)世界はばらばらで、たまたま空港での一夜が接点になっただけとか?
そこまで深読みする材料もないんだよなぁ。「こんな夢をみた」にヒントがあるようなないような。