べろべろの、母ちゃんは……

べろべろの、母ちゃんは… (ふしぎ文学館)

べろべろの、母ちゃんは… (ふしぎ文学館)

『べろべろの、母ちゃんは……』宇能鴻一郎出版芸術社
どうやら自分が読むべき日本人作家の方向がわかり申した。
ちくま文庫の猟奇文学館で気に入った宇能鴻一郎から、まず着手。

収録作品

  • 「地獄の愛」
  • 「柘榴」
  • 「花魁小桜の足」
  • 「菜人記」
  • 「わが初恋の阿部お定」
  • 「狩猟小屋夜ばなし」
  • 「美女降霊」
  • 「べろべろの、母ちゃんは……」
  • 「お菓子の家の魔女」
  • 「リソペディオンの呪い」

様々な性的嗜好フェティシズムがネタにされているんだけど、その根っこはマザコンマゾヒズムで、それにいろいろとトッピング(笑)
みんなアタリだったんだけど、特にお気に入りは、
-「地獄の愛」
 父代わりに育ててくれた梶原をいつしか愛するようになった美樹。
 しかし、彼は彼女のことをまったく女としては見てくれない。
 毎年恒例のヨット旅行に恋人を連れて行くが、考えるのはやはり梶原のこと。
 そんなある日、自分の彼氏と梶原が抱き合っているのを目撃してしまい……
 これは前半の予想が、後半の展開で裏切られ、ラストでまた一捻り。
 猟奇文学館にはこれを入れた方がよかったような……


-「柘榴」
 母の体臭を愛していた淳司。
 しかしその母は若くして癌でなくなり、彼もまた筋ジストロフィーに冒されていた。
 彼は、女性体育教師に整復マッサージを施されるが、
 いつしか、自分の醜い身体に対して、自分で悪罵を放つことが慰めとなり……
 生理的に、かなりむわっとします。


-「花魁小桜の足」
 阿蘭陀行となった花魁の小桜。
 ほるむまんというオランダ人のことを好きになるが、彼は本国へ帰ってしまう。
 そんな彼女は隠れキリシタンになるが、踏み絵の日が近づいていた。
 この世でほるむまんと一緒になれないのなら、あの世で、と考えるが……
 江戸時代を舞台に、いくつもの意味でアンモラルで、小説としてもラストでにやり。


-「狩猟小屋夜ばなし」
 インドにハンティング旅行にやってきた日本人たち。
 狩猟小屋で、夜、暇つぶしに案内役が自分の半生を語りはじめる。
 彼は元々は日本で熊撃ちをしていたのだが、そんな彼がインドに居着くことになった理由は……
 小咄系好きとして、これはいいです。しかもどれも淫靡で、ラストの締め方もお約束で余韻を残す。


-「べろべろの、母ちゃんは……」
 母が桶いっぱいに作ったこんにゃくのべろべろの感触がたまらなく好きな恵市。
 成人し、その嫁が、父と情事を重ねているのを知ったとき……
 題名といい、こんにゃくといい、嫌な予感(いい意味で)がひしひしと伝わってくる(笑)
 ラストはまぁまぁなんだけど、そこに至るまでの感触がたまらない。