MIDNIGHTS CHILDREN

真夜中の子供たち〈上〉 (Hayakawa Novels)

真夜中の子供たち〈上〉 (Hayakawa Novels)

真夜中の子供たち〈下〉 (Hayakawa Novels)

真夜中の子供たち〈下〉 (Hayakawa Novels)

『真夜中の子供たち』サルマン・ラシュディ早川書房
あの『悪魔の詩』のラシュディによる、マジック・リアリズム長篇。

1947年8月15日インドが独立した、その真夜中に生まれた1001人の子供たち。彼らは異能の者たちであった。その最初の一人であるサリーム・シナイの数奇な人生と、一族の物語。

HEROES』インド編って感じ(笑)。膝蹴りが最強ってなぁ……。パールヴァティとかタイムトラベラーの方が強くない? まぁ、そういう小説ではないからね。
主人公の人生と独立したばかりのインドの歴史が対になり、それがマジック・リアリズム的に語られていくんだけど、なんか、ちょっと触感が違う。マジック・リアリズムは境界線の見分けがつかなくなっていく文学だと思うんだけど、主人公で、語り手でもあるサリームは最強のテレパスだから最初から境目がない反面、出生の秘密には強固な壁を作り、さらに彼は信用できない語り手であると同時に、自分の記したことは事実と齟齬があっても、本当のことだと信じている。その文章が変わった手触りを醸し出している。
そして、一番の問題は、インド現代史を全く知らないから、彼の語り(=騙り)に、マジックもリアリズムもよく感じられず、歴史のダイナミックさに驚けなかったことかなぁ。