監禁淫楽

猟奇文学館〈1〉監禁淫楽 (ちくま文庫)

猟奇文学館〈1〉監禁淫楽 (ちくま文庫)

『猟奇文学館1 監禁淫楽』七北数人編〈ちくま文庫
超久々に日本人アンソロジー

収録作品

題名の通り、監禁をテーマにしたアンソロジー
ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』と『タイドランド』を比較した時と同じ感想を持ちました。
男性・女性作家で完全に視点が違い、男が対象に自己の欲望を投射するのに対して、女は内で自己完結するんだよね。まさに、肉欲と情念の違い。男がダッチワイフを欲しがるのに対して、女性は着せ替え人形なのね。


お気に入りは(と書くと誤解を受けそうだけど)、
・「ズロース挽歌」
 死期の近い囚人から、話を聞いてほしいと頼まれた記者。
 彼は、女学生を監禁し、数ヶ月間、夫婦のように暮らしていたのだ。
 彼が幼い頃から抱いていた欲望とは?
 生理的にけっこう来ます。
 ラストの呆気なさもなかなかいい。
 ネタバレになっちゃうけど、『完全なる飼育』って実話を元にしてたのね。知りませんでした。


・「おれの人形」
 念じただけで触ってものを石化できる男。
 ある日、大学のマドンナを家に連れ込み、彼女を……
 監禁=生きたダッチワイフの入手、という見方では直球の作品。
 残酷きわまりなく、胸くそ悪くなる作品。
 鬼畜という点では、これが最高。


・「女形の橋」
 元女形の語る、生まれ故郷の村の民謡。
 それは、悪食べという職の男を歌ったものだという……
 いわゆる監禁とは毛色が違うんだけど、
 ある種の入れ子構造なんだけど、それが逆に現実味を増し、その境目が曖昧になって、向こう側にひっぱられるような作品。
 民謡も、「竹田の子守唄」を連想させるなぁ。