STORIE NATURALI
奇想系イタリア短篇集もこれで3冊目。こういうものを出してくれるのは本当にありがたい。
・「ビテュニアの検閲制度」
・「記憶喚起剤」
・「詩歌作成機」
・「天使の蝶」
・「“猛成苔”」
・「低コストの秩序」
・「人間の友」
・「“ミメーシン”の使用例」
・「転換剤」
・「眠れる冷蔵庫の美女―冬の物語」
・「美の尺度」
・「ケンタウロス論」
・「完全雇用」
・「創世記 第六日」
・「退職扱い」
新発明・珍発明によって、皮肉な結末を迎える、と言うパターンと寓話的なものが多いんだけど、けっこうハードSFしてない? アウシュビッツからの生存者だった人生を考えれば、人間の本質とは? という深読みをするべき作品が多いのかもしれないけど、表面だけでも愉快に読める。
お気に入りは、
・「ビテュニアの検閲制度」
文学や芸術を守るために厳しい検閲が敷かれるようになった世界。
しかし、検閲官特有の職業病があり、なり手がいない。
代わりに機械にやらせるが、これも融通が利かない。
そこで、動物を訓練することに。
軽いんだけど、ディストピア、バカらしいお役所仕事、新発明、と詰まっている。
分かり易いオチ(?)がいいなぁ。
・「詩歌作成機」
仕事が山積みの詩人。
そこで、NACTA社の詩歌作成機を使ってみることに。
「ビテュニアの検閲制度」と似たような話で、オチも読めるんだけど、古典落語的にくすり。
NACTA社シリーズの一作。
・「天使の蝶」
ベルリンの廃墟に調査にやってきた連合国側の学者。
あるアパートの一室に残された、先史時代の鳥類のような奇怪な骨の正体は?
『アフター0』にありそうなSF短篇。
・「人間の友」
サナダムシはその自らの体で詩を歌っていることが判明。
その内容は?
バカらしくていいなぁ。ラストの無情なオチも(笑)
・「眠れる冷蔵庫の美女―冬の物語」
22世紀のとある屋敷。
そこには、20世半ばから冷凍保存された美女がいた。
年に数回だけ解凍され、重大ニュースを目撃し、未来へと伝えるのだ。
ある年、屋敷に招かれた青年が彼女に恋をして……
壮大な実験のはずなのに、ひじょうに俗な結末。
・「ケンタウロス論」
僕の家にやってきたケンタウロス。
彼と仲良くなり、様々なことを教えてもらう。
ケンタウロスにはメスは存在しないのだが、
ある日、僕の幼馴染みの娘に片想いをして……
神話的生態と科学的生態の描写が、なんとも絶妙なバランス。
・「創世記 第六日」
世界の創造に奔走する各責任者たち。
六日目で、「ヒト」は何から作るべきか話し合われる。
鳥類か? 爬虫類か?
なぜか激しくSFを感じてしまった(笑)
ただ、ヒトがまだいないのに、ケンタウロスに言及されているシーンが萎えた。