おとうさんがいっぱい
- 作者: 三田村信行,佐々木マキ
- 出版社/メーカー: 理論社
- 発売日: 2003/02/01
- メディア: 単行本
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短篇集。
マイミクのオススメで着手。
・「ゆめであいましょう」
ある日、赤ん坊が生まれたばかりの家を見たミキオ。その家はどこか見覚えがある。翌日、その赤ん坊が5歳になった夢を見る。そして次は小学生で……
・「どこにもゆけない道」
いつもと違う道で帰ることにした少年。全く見覚えのない通りを過ぎ、ようやく家に着くと、そこには両親の代わりにクラゲのようにブヨブヨしたものが。驚いて駅まで戻り、今度はいつもの道で帰ると、家が見つからない……
・「ぼくは五階で」
501号室の鍵っ子のナオキ。おやつを食べて、外に遊びに行くためドアを出ると、そこは部屋の中。何度やっても外に出られない。両親に電話しても信じてくれない。ベランダを伝って、隣へ行くが、やはり501号室。ソバの出前を頼んで外から開けてもらおうとするが……
・「おとうさんがいっぱい」
ある日突然、日本中で父親だけ増殖してしまうという現象が起きる。増えた父親同士は喧嘩、家族も混乱してしまう。政府は、一人だけ残して、余分な父親は回収すると布告。トシオはあみだくじで一人選ぶが……
・「かべは知っていた」
夫婦喧嘩の末、壁の中に入ってしまったカズミのお父さん。お母さんは家出したのかと気づかない。カズミは新聞や雑誌を読んであげるのが日課になる。しばらくして、アパートが改築されることになり、職場で紹介された家に引っ越すことになったカズミとお母さん。死期が近いことを悟ったお父さんは、自分の言葉をカズミに書き取らせる……
発表された年代を考えると、それまでの価値観(家族観)の変化、崩壊、破棄などと読み込めるのかもしれないけど、それ以前に「ジュヴナイルにしては……」という但し書き抜きで、怖ぇ。ちょーこぇぇ!
ちょっとネタバレになっちゃうけど、全篇不条理で救いなし。
かなり直球で『世にも奇妙な物語』で映像化されてそうな作品ばかりで、なおかつ「死ぬほど好き」レベルの後味の悪さ。
隠喩としてみれば、「かべは知っていた」は旧弊なものを捨て、新たな世界への新しい展望、と思えるけど、それでも後味良くないよなぁ。
個人的お気に入りは、後味の悪さからすると「ぼくは五階で」、奇想的には「おとうさんがいっぱい」かな(こっちも後味悪いけど)
新書サイズの児童書でしか出てない海外SFなんかもあるから一時期チェックしてたんだけど、この手の作品があるなら要チェックだなぁ。